【第7回】そんなこんなを詠んでおります(その二) | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

草の立つ山

草の立つ山

【第7回】そんなこんなを詠んでおります(その二)

2015.07.25 | なみの亜子

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廃校になつかしき朝おとずれて滑車は鳴りぬ門扉開けば
 
竹箒にボール転がす校庭に穂先ひろげてすすきの光る
 
おにぎりの具は三種とし握りおく向こうの敷地を刈りにゆく朝
 
おもしろい夢だったのに 起きながら何度も何度もあなたは言えり
 
母は鎌で刈りいたりけり左手の軍手にぎゅっぎゅっと草を摑みつ
 
日照る山に刈れば筋肉硬直し登り帰れぬままに時過ぐ
 
こぶらがえり、言うやつおったなふくらはぎ抱えて山に転がりにつつ
 
刈草のにおいのなかに黄ばみゆく昼のありたりいつかどこかの
 
廃校となりたるのちを水色のじょうろが二つ居残りており
 
日の本のくらき家屋にもの炊きて窓向くこころを抑えがたしも
 
漆喰の壁は陰影やしなえるわが下塗りをきみが仕上げて
 
根菜のかき揚げを食む夜の卓に言葉はゆっくり意味をなしゆく
 
一度ずつ鍵をなくせることありきあなたは川にわたしは草地に
 
このごろは近くまで来る夜の鹿の小枝折るおと目つむりて聞く
 
廃線のごとき眠りのどのへんか湿り気のある土を掘りいき
 
 

2015.7.25