【第16回】ターコイズ | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

とうめいなおどり

とうめいなおどり

【第16回】ターコイズ

2015.09.24 | 三上その子

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どこまでものびてゆく明るい青
バレンシアの空
雲がひらくとき
響きがかえってくる
 
かえってくる
いつまでも
花ばなが降るように
空に鳥が鳴くように
いわれなく
世界は青を愛している
 
あなたと私をわかつ
あらあらしい数字
ターコイズの首飾りは
指でたどる祈り
喉にかけるとき
幼いヒュパティアが
いっせいに目覚める
 
どこまでもゆらめく明るい青
皮膚をとかす融音
生命の樹の蛇が
背骨から羽ばたく
 
あなたと私をうたう
あたらしい音符
ターコイズの耳飾りは
かなえられた祈り
風を鳴らすとき
老いたアトラスが
ついに荷を降ろす
 
どこまでも広がる明るい青
海をわたる音階(しらべ)
うなじから髪をすくいあげ
くちをひらく女神
 
いわれなく
世界は青を愛している
 
血の沁みた土を踏み
切れた河をつないで
誰も気づかないところへ
はじまりの響きが
かえってくる

 

2015.9.24