【第3回】そんなこんなを詠んでおります(その一) | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

草の立つ山

草の立つ山

【第3回】そんなこんなを詠んでおります(その一)

2015.06.27 | なみの亜子

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春一番とちまたに云う日を山は荒れ肥料袋のいくつも飛びぬ
 

春頃の烏のおかんは降り立ちてたちはだかるということをする
 

桐の花まぶせるごとき山となりひかりのもとにうっとり今日は
 

山間の畑おおかた老い深く陽のあるときを陽にあたりおり
 

まいまいさん、と言いて登れる宮のみち出遭わば雉のうろたえるなり
 

けやきより樫へと降りる鳥のありこの世にたった一人を奪えず
 

黙々と杉の林をゆくときに涙はまっすぐしたたるしずく
 

とんびふたつ空を出でてはまた入る空にあまたの襞あるごとく
 

意気地なし、抱擁、氷雨。紀州より山に魚屋のぼり来る日の
 

じっとしている雲のないこと散らかっていていいのだと意訳してみる
 

山が近く見えてきたればやがて雨 あーと云うときのあなたが好きで
 

二年ぶりに戻れるつばめ巣の下にあたらしき糞は丘をなしゆく
 

夕暮れの山にうつれる山の影あかるきところに別れは告げむ
 

ほおうほおうと夜を啼く鳥ねぎわのわたしにほそくひらかれる喉
 

​うちつけのかなしさふたりきりでいて夜の山には樹影の繁る

 

2015.6.27