詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

とうめいなおどり

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【第14回】彼の言い分

2015.09.10 | 三上その子

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もし選べるなら
逝くのは昼間
光あふれる中がいい
ぼくたち二人きりがいい
 
男どもには
見せないほうがいい
気が弱いから
 
君?
君は耐えられる
どんなことにも
 
逝くときは逝く
いけなくなったら
 
遠慮?
しないよ迷わない
どっちだっていいんだ
だけど まだまだ大丈夫
 
お年だからっての
よしてくれないか
頭にくる
爪は手だけでいい
肢はいい
切る時はすばやく
 
ブラシ?
必要ないね
点滴?
重いからいい
毛並のためって
ほんとうに?
 
右肢は
洗面台に飛び乗ったときいちど
痛くしてずっと痛い
目は見える
ゴミが
ついてるみたいだけど
 
爪とぎはヴァリエーションを大切に
 
お父さんを
悪く言わないように
彼は忙しいから仕方ない
かわりに君が通ってくれば
その件は
問題ない
 
長生きすればいいわけじゃない
 
お父さんの言葉は
短くて好きだ
独り言を聴くのも好きだ
対等だ
 
君の話は長い
後半は
僕のことに聞こえてこない
 
世話になってる
文句はないよ
心配性かな すこし
いまの暮らしには
満足
 
くちゅくちゅ?
楽しいね
肢もとが柔らかいとやりたくなる
妹がときどき
上から来る
ひとりの時だけ
僕に会いに
 
カーテン
あれは邪魔だ
いらないものだ
晴れた空の
青い色が見たい
テラスで
食べるのもいい
工事の
音がしない時がいい
 
お母さんと旦那さん?
とくには来ない
会えるよ
笑ってる どっちも
 
ひとこと言っておこう
 
星は夜 光る 
 
君は耐えられる
どんなことにも

 

2015.9.10

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