【第3回】ドーナツの穴にタナトスが宿っていると仮定した場合の問1を解いてはいけない。 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。

『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。

【第3回】ドーナツの穴にタナトスが宿っていると仮定した場合の問1を解いてはいけない。

2015.02.13 | そらしといろ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 
 三年生の、赤い上履きとすれ違わなくなった。
 
一学年分の気配が薄らいで
学校は昔の面影を取り戻したような気がする
 
 出来たばかりの学校は、どこも四角い空き箱だったはず。
 
廊下はリノリウムなのに
教室の床は板張りで所々がささくれている
すり減ることや壊れること
減少していくのが正しさだと教えてくれる
空白に満ちているのが希望だって真顔で言う大人たちが正直怖い
 
 箱から箱へ移動していくのが人生なのか。
 
更新されて空白が回復する
弁当箱 ロッカー 下駄箱
三年生がいない二月の教室
 
 時々、すれ違った上履きが赤くて、
         幽霊かと思えば進路室へ消えていく三年生だ。
 
人がいない二階の空間に満ちているのは刺々しい冷気
空間への立ち入りを拒まれているようにすら感じる
四月には緑の上履きの僕らが移住してくるけれど
それまでは赤い上履きがここの通行証みたいに
思えるほどには生々しい霊気が居座っている
 
   (帰宅部だから知り合いの先輩はいないけど、
    卒業おめでとうございます帰宅部の先輩方。)
 
何も入っていない四角い箱に憧れる
フタのようなドアを開けたら希望よりも貴重なものが逃げてしまう
学校からはすでに逃げてしまったそれに僕はなりたかった
 
 何もなかったことへは戻れない教室の、
               ドアは通過儀礼に破ってしまえ


 

2015.2.13