（五月の、と言うだけで爽やかさと憂鬱さを兼ね備える、
　五月のイメージカラーは緑色だと思う。）
 
緑色の上履きが降り立つ
ここは
見上げるばかりの教室の天井の
もう一枚上の
ほとんどまぼろしの屋上の床
 
生徒の自由な立ち入りが禁じられた
そこは
柱も天井もないことを許されている
 
（転落防止の柵も高くはない。
　ふと思い浮かぶのは、熱気球のゴンドラ。
　なんだか、とてつもなく大きな熱気球の、
　ゴンドラに乗っている気がする。
　ただただ広がる青い空が実は、
　膨らんだ頂点が見えないほどの巨大なバルーンで、
　屋上どころか学校ごと持ち上げてもうすぐ……
　離陸する妄想に重りを下げて地上へとどめる。）
 
先生の声で男女に分けられる
クラスメイトの多くは冬の上着を脱いだ
上半身にワイシャツの白さをはためかせて
 
ファインダー越しには
きっと
（五月の色の風に）
ひらめくぼくらがもうすぐ
カメラのフィルムに
卒業アルバムの一ページに
四十人で一枚の
薄っぺらいかたまりになる