【第12回】「三階建てだった第二校舎の三階部分が取り壊されてから時々出現するカイダンの巻(新説・七不思議より)」 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。

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【第12回】「三階建てだった第二校舎の三階部分が取り壊されてから時々出現するカイダンの巻(新説・七不思議より)」

2015.04.17 | そらしといろ

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誰かの一年に削られた机のふちをなぞる
 
椅子の背もたれへ
ぎしりと今日の体重をあずける
 
小さなロッカーの扉の
内側で剥がされた
星の形のシール
 
新しいっていう雰囲気に踊らされていた
 
足が去年の教室へ
向かっていることに気付かない朝
 
去年の教室の扉に
手をかけてちらりと見やる
景色からたしかに浮いている身体
 
馴染んでいた景色へ溶け込めずに
狼狽えながら階段をのぼって
 
間取りは新しくない中身の新しい教室へ
 
パッケージはそのままに
中身が新しくなったお菓子が
鞄の中でカサカサ揺れる
音にくすぐられる心臓あたり
いとをかし、なんて呟く
 
日焼けした
いつかの時間割の
はためく窓辺からは見えない
 
海を想う
 
誰かの瞳のさざ波を感じる

 
2015.4.17