【第11回】それでも川は流れている | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

誰でも明日のことは考える

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【第11回】それでも川は流れている

2014.07.28 | 城戸朱理

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激しい雨、
激しい雨が、雷鳴とともに近づいてくる
「極地的な豪雨」と散文的に語られる、
地表を破砕する意志のような
激しい雨が
 
紫電が大地を撃つ
その轟音のあとで異様な振動が続いた
あれは、裂けた樹々が倒れる音か
 
夏の空が気まぐれになった時代には
心も千千に乱れていく
名前まで裂けたとしたら
君は何と名のるのだろう?
見慣れた街、
何百、何千もの電柱が濡れている
冷たい炎のように
 
渇川を渡る橋が落ちたが
気にする人はいない
かつては、その森の奥に湖があった
水没した村が湖底には眠っている
今、空は裂けた名前の欠片が渦巻いて
あまりに暗い
無量光院跡。
残るのは庭園ばかりで
光は失われたままだ
きっと、太平洋を隔てた大陸の中央部では
竜巻が発生している
人も馬も空に呑まれ。
人も馬も。


​2014.7.28