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誰でも明日のことは考える

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【第12回】ゴンドウクジラが打ち寄せられる日

2014.08.04 | 城戸朱理

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梅雨が開けて、
空がラピスラズリのように硬くなった
海辺には積乱雲が積み上がり、
世界は不穏さを増していく
登り詰めていく水銀柱のように
 
昨日、どこかで起こり
明日も、どこかで起こるだろう
そして、今日もまた。
火葬された父の遺骨と対面したとき
骨の触れ合う音が不思議なリズムとなって
死の本質を奏でるようだった
今、このときにも。
 
西アフリカで、エボラウィルスの感染が拡大している
生命の最小単位である細胞を持たず
それなのに自己複製能力を持つ非生物、
この非生物は科学物質のように、
ときには〈結晶化〉する
生物ではないのに生命なのか
生命なのに、結晶するのか
この難問(ルビ=アポリア)を映したかのように
空はコバルトに張り詰めて眩しい
 
そして、海は。
 
今日、起こるように
明日も起こるだろう
それを免れるものはいないだろう
父の骨を拾うとき、
不思議な音が聞こえてきた
遠ざかっていく風景のような
近づいてくる足音のような
どこか波の音にも似て
躯のなかから響いてくるように。
 
地中海の東岸では空爆が続き、
湘南の海岸には
今日、ゴンドウクジラが打ち寄せられる


2014.8.4

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