【第8回】真紅のグロスしか似合わない国 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

誰でも明日のことは考える

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【第8回】真紅のグロスしか似合わない国

2014.06.30 | 城戸朱理

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もう何年も虹を見ていない

天候は、あまりに気まぐれで
人生を揺さぶったりもする
季節が変わったのは、グロスの色で知る
自我を塗りつぶしたようなリップグロスの色で

どんな夢見がちな人間だって
永遠の生命なぞ絵空事なのを知っているのに
国家が永続すると、なぜ、信じられるのか
真っ赤なグロスの残像が目の端に残る

飛行機が降下していくと
几帳面な正方形の水田が広がっていく
絶え間なく蒸発する水分は列島を濡らしていくだろう
あおざめていく森、
湿度を呼吸する人々は
ビルの谷間で真紅の唇から深いため息をつく
昨日と同じものは何もない
そして、今日と同じものは何もないのが、明日
変化の総量で人生は成り立ち
その飽和点に死がある。

ここからが、日本。

ようこそ。

2014.6.30