詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

流星の予感

流星の予感

【第14回】第十四週

2014.04.14 | 山田航

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  足音が鳴り響く時間は、
  永遠のように思えた。
  僕はその貴重な時間をうっかり、
  もし自分たちが誰の目にもさらされず幸せに過ごせていたならという、
  くだらない空想に費やしてしまっていた。

音叉鳴る鳴り止むまではもう少し蒼いすばるを捉へてゐよう

  僕たちは野原にピクニックに行く。
  白いベッドの上のようなシロツメクサ畑に座り、
  妙にじゃがいも料理の多い弁当を広げる。

モデルハウス公開中の平日の午睡よ潮は海のまばたき

  君のつくるじゃがいも料理は、味付けがやたらと甘い。
  炭水化物のキャンディーだ。
  その甘さを愛していた。
  僕の甘さを肯定してくれるようだった。

そしてまたヘッドライトに切り取られきみはひかりの核となるのか

  上機嫌になった僕は、
  お気に入りの漢詩なんて口ずさんでみる。

葡萄美酒夜光杯  葡萄の美酒夜光の杯
欲飲琵琶馬上催  飲まんと欲すれば琵琶馬上に催(うなが)す
酔臥沙場君莫笑  酔うて沙場に臥すとも君笑うこと莫かれ
古来征戦幾人回  古来征戦幾人か回(かえ)る

王翰『涼州詞』

  君は酒飲みが嫌いだから、酒飲みの詩も好きではないのか。
  思い出してしまう男でもいるのか。
  退屈そうに花環など編み始めてしまった。
  しかたないので、自分なりに訳詞をつくってみる。


ワインよ夜の光のなかで
熱い響きに酔わせてほしい
砂漠に死すともどうか笑うな
きっとこの世で最後の宴

  そうだ。
  もう誰も帰っては来れない場所にまで、
  僕たちは来てしまったんだ。


2014.4.14

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