【第5回】第五週 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

流星の予感

流星の予感

【第5回】第五週

2014.02.10 | 山田航

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  僕らは確かに
    追われているのだろう。
      誰からかはわからなくとも、
        二人がその感覚を共有していればよかった。

腐食する銅に滴る水音の数だけ違ふ幸せよあれ

  君が思いっきり嘲笑ってくれるなら、
  僕はどんな追跡者のことだって妄想するよ。
  ほら、あの警官は四十二歳。
  昨晩妻に別れを切り出されたことにむしゃくしゃしていて、
  今日はあんなに必死で追ってくるんだ。

薄明のゼブラゾーンに白色のライン幾重にかさなりて、
人々らみなその隙間隙間に目には映らざる黒を確かに見抜きては、
見えざる黒にひざまづく準備のやうに立ち止まるなり。

  トルクメニスタンにダルヴァザという村がある。
  その村には天然ガスの噴出口があるのだが、
  落盤事故で有毒ガスの放出を食い止めるために点火してしまってからもうかれこれ四十年以上、
  ずっと真っ赤に燃え盛り続けているって話だ。

怒りは炎、悲しみは水、喜びはいかなる元素にたとふるべきか

   僕はときどき中途半端に本当のことを言うだろう?
ミソジニーのごとく原油は噴き出して大陸といふ仮面を剥がす

  君は僕を信じろ。
  それが君の価値だ。

兄の才を信じ続けたテオのやうに見てたよ風が満ちてゆく橋

2014.2.10