【第6回】第六週 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

流星の予感

流星の予感

【第6回】第六週

2014.02.17 | 山田航

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  思い出す。
  ひたすら南へ向かったことを。
  とびっきりのやわらかな毛布を用意したことを。

僕たちのささやかな罪をささやかと呼ぶ罪もあり幾重もの雲

  エンジンの音なんかよりはるかにやかましく心臓が響いていた。
終助詞はうるさいだけと書き残す君が衛生責任者なら

  冬だったんだ。
  寒かったんだ。
  そうするしかなかった。

ゆく冬よ街の電器屋いつぱいに銃開発者のドキュメンタリー
韓国のラップ聴きつつ風邪気味の頭ささへて行く雪の道

  手に触れるぬめりとした重さを今でも覚えている。
海に花そして木の葉の散る丘に浅い西日は暖かく燃える
ショーウィンドウに谷折りの陽はうすれゆきカラスはつつく雪解け水を

  僕たちは本当は帰ろうとしていた。
車窓から風の偽物を招き入れ「ボニーはシャワーをどうしてゐたの?」

2014.2.17