2016.09.16
モバイルデバイスによるITの武装が新たな「価値創造」へとつながる
進むモバイル導入
“The computer for the rest of us”。1984年に初代Macintoshを発表したときのアップルのスローガンは、当時一部の専門家向けだったパーソナルコンピュータ(PC)を、(広く一般の)“残りの人々”へ届けること、そしてマウスやグラフィカルユーザインターフェイスを搭載するMacintoshこそがそれに相応しい存在であることを世間に宣言するものだった。それから30年あまり、PCは多くの人の手に渡り、人々の生活を大きく変えてきた。
しかし、それでもまだコンピューティングが届かない一部の人々がいる。アップルはそう考え、さらなる“the rest of us”に向けて、iPhoneやiPadを発表した。これらのモバイルデバイスはPCと比べて起動が速く、手軽に持ち運べ、さらに指によって直感的に操作できる。そして手元からどんな人でもインターネットという広大な情報へアクセスでき、さまざまなアプリを使うことでデジタル時代の恩恵に与れる。モバイルデバイスが私たちの生活のあらゆる面でPCを凌駕する存在になったことは、毎日の生活を自ら反芻してみれば明らかだろう。
そうしたPCからモバイルへのパラダイム変化は、次第にビジネスの世界へも波及していった。iPadが登場した2010年から、法人市場におけるモバイルデバイスの普及率はアップル製デバイスが先行する形で高まりはじめ、2015年末の国内における普及率は38%に及ぶ(ミック経済研究所調べ)。また、2015年の国内法人向けタブレット出荷台数は241万台で、市場はiOSとアンドロイド、ウィンドウズの3強、中でもiOSのシェアが4割と高い(IDC JAPAN調べ)。
こうしたモバイルデバイスの導入は、当初一部の先進的な企業に限られていたが、iPadの登場から6年が経過し、今では企業規模問わず、製造や小売、流通、医療福祉、金融、サービス、観光、通信、自治体といったあらゆる業種業態でPCに代わり活用されている。コンシューマー市場がそうであったように、「モバイルファースト」の概念から、従来のPCが利活用されなかった仕事の現場にも、生活の延長線上で自然にモバイルデバイスが使われ始めたのだ。