2016.09.16
青い“巨人”の栄光と苦悩
1911年にC-T-R社としてスタートし、1924年にIBM(International Business Machines Corporation)と改名した企業は、当初タイムレコーダや計量器、パンチカード式会計機などを製造する小さな会社だった。その後タイプライター事業や電子式コンピュータ事業に参入。第二次世界大戦後は、メインフレームと呼ばれる基幹業務用の大型コンピュータの製造で一時代を築く。1981年「IBM PC」をもってパソコン市場に新規参入すると、ここでも劇的な成功を収めた。
そのほかにも、RAM、ハードドライブ、バーコード、磁気ストライプ、レーシック技術等を生み出し、さまざまなビジネスを手がける巨大企業へと成長していったIBM。同社は、いわばIT業界のリーディングカンパニーである。
コーポレートカラーの色をもじって「ビッグ・ブルー」、あるいはジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する独裁者「ビッグブラザー」とアップルが呼んだように、憧憬とも畏怖ともつかない呼称が付けられるほどの巨大な存在。だが、その栄光も次第に陰りを見せ始めていく。
1980年代後半から1990年代初頭にかけて、マイクロソフト、インテル、そしてアップルといったパーソナルコンピュータを手がける新時代の騎手たちが台頭してくると、それらに市場を奪われる形で、その業績に大打撃を受けた。1992年度会計では、49億7000万ドルという巨額の損失を計上。IBMのメインフレームは、「時代遅れ」「過去の遺物」「滅びゆく恐竜」などと揶揄されるようになる。