2016.09.16
時代時代の先進的なテクノロジーによって、社会に、ビジネスに、変革を起こしてきたIBM。モバイルデバイスによるワークスタイルの変革を、さらに推し進めるテクノロジーがコグニティブだ。コグニティブ・システム「ワトソン」がモバイルと出会うことで、今まさにビジネスの中心が変わろうとしている。
高井 良輔
日本IBMコグニティブソリューション事業部モバイル事業推進リーダー。サービス・ソフトウェア・ファイナンスなど事業部門を横断したソリューションの導入を担当。ワトソン・アナリティクスなどのテクノロジー領域やモバイル領域で活動中。
“これからはコンピュータが人間の判断を支援します”
演算から経験のサポートへ
「コグニティブの時代へようこそ」
IBMが高らかに謳うコグニティブとは、「認知」を意味する英語で「経験」を学習する新たなテクノロジーのことだ。それを体現するのがコグニティブ・システム「ワトソン」である。機械学習や自然言語処理といった、いわゆるAI技術は用いられているものの、IBMはそれを「人工知能」と呼ばない。コグニティブといい、ビジネスへの貢献価値で表現する。
ワトソンの特徴である経験に基づく学習について、高井良輔氏は次のような例を出す。
「トンネルの壁の劣化を調査するのに、ハンマーで叩いて音を聞くという方法があります。どういう音ならOKなのか、その理屈は詳しくはわかりません。音の減衰の仕方なのか、音の高低なのか。でも、経験を積んだ検査官には、その違いがわかります」
ワトソンは、このような経験でしかわからないようなもののパターンを学習し、適切な判断が下せるようなモデルとして機能する。
「コンピューティングは、今まで人間の知的活動の中での演算を助け、自動化を助けてきました。いよいよ経験による判断を支援する時代になったのです」
ワトソンのもう1つの特徴は、自然言語を理解できることだ。単に文章として理解するだけではなく、質問者の意図を理解し、それに対応した応答ができる。人は日常的に誰かに何かを問い合わせ、考えてもらい、答えを出してもらうということを無数にやっている。ワトソンは、このコミュニケーションにうまくはまる。人間が自然言語で問い合わせると、ワトソンは経験値から答えを出し、人間に理解できる自然言語で回答する。