2016.08.16
ソフトバンク孫正義社長のプレゼン資料を作成していたことでも知られる、書家の前田鎌利さん。デザインを勉強していないビジネスパーソンでも、今日から実践できるビジネス文書作成のテクニックを教えてもらった。重要なのは、センスよりも「相手の立場」に対する深い洞察力だ。
相手に伝えるために
あるときは書家として、またあるときはプレゼンテーション講師として活躍する前田鎌利さんですが、書もプレゼンも「相手に思いを伝えるためのツール」であることは共通しているといいます。ですが、その認識に至るまでには大きな失敗も経験したとのこと。
「実は僕、プレゼンや資料作りは不得意でした。通信会社勤務時代にシンクタンクの人たちと仕事をさせていただく機会があり、そのときに初めてパワーポイントを使うという文化に触れました。彼らはレポートに用紙5000枚とか大量の紙を使うんですね。私も見よう見まねで本部長がキックオフミーティングで話すプレゼン資料を作ったんですが、スライドの動きのすべてに音を付けてしまって、本部長が話すたびにドーン!と鳴ってしまってうるさくて(笑)、今でもその上司の方には申し訳ないことをしたなと思っています」
そんな前田さんのプレゼン資料作りに大きな変化が起きたのは、5歳から続けてきた書道の考え方を取り入れるようになってからだといいます。
「それまでは学芸大学の書道科を出て教員免許を持っていても、現在の仕事にはまったく役に立たないと思っていました。ところが、パワーポイントというツールが出て、“表現”する分野では、書やアート作品のデザインについての考え方が活かせると感じました。その後、ソフトバンクへ転職してからは、なるべく少ない文字で相手に伝えるにはどうすればよいかとか、写真はどう使うのが効果的かなどを考え続け、ソフトバンクアカデミアで研鑽を積み、そこから孫さんのプレゼン資料作りを任されることになりました」