【第11回】そんなこんなを詠んでおります(その三) | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

草の立つ山

草の立つ山

【第11回】そんなこんなを詠んでおります(その三)

2015.08.22 | なみの亜子

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宮さんの参道わきより引き来たるこっそりした木はコウゾでありぬ
 
一つずつしっかりした葉に影なせる大山蓮花は風を冷やして
 
山沿いは雨、といえども降らぬ山あえぎあえぎて縮みゆくなり
 
山火事は永谷(えいたに)という撒水のヘリの行き来を見上げては数う
 
風がある風があるとかいいながら吹かれ足りない灌木として
 
死のことを思うこの世に石蹴れば犬の二頭は追いて遊べる
 
渇水のただごとでなき川底に筍の皮貼りつきており
 
谷まよう靄にときどき見失う石裏嗅ぎてうごかぬ犬を
 
しびれるほどおさえこむかかえこむこころ 桜は花が静かなのです
 
今日の光は樹々の翳りのそばにあり惜しまずにいて逝かせし時間
 
こんなにも家事に夫にくたびれて陽を追うように母を思えり
 
山帽子ことしの花のおおぶりなひらきに夜の一角白む
 
夜は夜のくらさにありて遠くより川音届く木漏れ日のごと
 
深く息をすい込むときに少しだけさざめく森のありなむ我に
 
谷に水しゃがむを見たりかわいくてかわいそうだった母とうひとは

 

2015.8.22