【第10回】空の魚 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

とうめいなおどり

とうめいなおどり

【第10回】空の魚

2015.08.13 | 三上その子

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 
ひりひりする嘘
ばかりに囲まれて空を泳ぐ
ざらざらする夜
ばかりを数え
あげて眠る
 
問うべきことは
問い果てた
 
おおきな疑問符の
かたちをして
 
痛い街を 
円い村を
どこまでも泳ぐ
パレードにはじかれて
遠い花火を聴く
 
教えられた訳でもないのに
歌いだした
三井住友銀行のそばで
魚臭いソバを食べて
ますます
魚になるのだろう
 
鱗は光るよ
尾ひれは跳ねる
あたりまえに
からだのしくみ
 
そんなことでは
語るまい
私は海に
もどれない
 
くちもとに痣
背のひれに傷
古代
生まない女は戦士になった
 
気やすい唇
うかつな腕
ともに堕ちる気はなく
 
どの魚もみな
空を厭う
 
あらゆる者の妻となり
あらゆる妻の敵となり
 
海から空へ
投げられて
 
おおきな疑問符の
かたちになる
 
空は答えない
海 以上に

 

2015.8.13