【第6回】吹きゆくのは | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

日録

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【第6回】吹きゆくのは

2015.07.17 | 森川雅美

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吹きゆくのは矛盾だと、
しずかに開かれる目があり、
ややよわまる足は土に触れ、
伸ばすあなたの指先に、
駆けぬける蹄の音がとどろく、
背後から盛りあがるままの、
わたしたちのひくい空は、
あまりにも暗く曇っていて、
留まるグラスの底に沈むものは、
まだ遠い月の満ちる予感の、
吹きゆくのは矛盾だと、
街角のともるいくつもの足跡に、
踏みつけられるちいさな背骨の、
あなたの声の響くひくい音階が、
散らばる風圧にさらされる、
高さとはわたしたちの生と死、
わたしたちの生と死だから、
ただ立ちつづけるだけの考察を、
彼方の森林を過ぎていくため、
雨は掌のくぼみにたまり、
流れが削る眼窩のうちへ、
吹きゆくのは矛盾だと、
よわまる温もりのほとりに佇み、
消えていくために伸びる目の、
踏みしめるあなたの足の重みは、
切り落とされる半身を補いつつ、
わたしたちの今日の反芻は、
ふり返るまでは現である光の、
むき出しに晒される角膜を、
覆いつづけるための広がりに、
ゆるやかに尾をひく気流が満ち、
 
 

2015.7.17