【第1回】ごきげんよう | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

とうめいなおどり

とうめいなおどり

【第1回】ごきげんよう

2015.06.11 | 三上その子

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わたしの詩は
会いたかった あなたへの手紙
ありがとう
いてくれて
そこに
いてくれて
 
死なないでね
もう しばらくね
 
十五週間
あります
この筆を
ふたたび置くまで
 
初夏にはじまり
秋におわる
ひと夏の
短いおどり

ような本
 
息を
ふかく吐いて
吐き
つくして
 
いっしょにね
ゆっくりね
 
そうしたら
あなたに入ってゆける
あたらしい故郷の
酸素をふくんで
 
わたしの手は小さく
なにを
守ることもない
 
さしだすのは
わたしだけ
衣を脱いだ
この
肌だけ
 
どうぞ めくってね
つぎのページを
 
― 白い紙すら無いじゃないか
― とうめいな儘じゃないか
 
あぶりだし
なのよ
 
あなたのまなざしが
わたしをかたどる
 
あなたが
もっとも長い夜につく溜息で
吹きよせられた泡の奥から
私は顕現する
 
世界へ

 

2015.6.11