詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

冬はつとめて

冬はつとめて

【第12回】六月

2015.04.18 | 花山周子

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四歳にも三歳にも見えるけれど五歳くらいの女の子の長い髪の毛はやや右寄りに編みあげられて、赤いチェックのリボンがてろんと付着している。ピンクのトレーナーに少しぶかぶかしたカーキのズボンを履いてトテトテ歩く。急いでいてもトテトテ歩くようだ。私はなんとなくその子の後ろを歩く。駅ビルの雑貨屋からアクセサリー屋へその子を連れて母親が行く。母親は歩きながら「ほら見て!ほらかわいいね!ほらきれいだね!」とぶら下がるネックレスの小さなガラスのハートに指で触れたり、指輪の上に乗っかったプラスチックの花を指でつまんだり、次々に商品を指し示す。ぎっしりアクセサリーが並ぶ棚に屈み込み、拾い上げた紫色のコサージュを娘の髪に乗せる。「ほらかわいい!」と言ってしゃぼん玉のようにコサージュをもとの棚に戻す。娘は棚に十本の指を乗せ、母親がきれいだね、と言っていくアクセサリーをつま先立ちして覗いているが母親は次の棚へと娘を引っ張ってゆく。母親の手に込められた力が強く、娘を引っ張って行く。ひだひだのワンピースを娘の小さな体にあてて、「ほらかわいいね!」と覗きこむ鏡のなかに母と娘が微笑み合う。「かわいいですねえ、よろしかったらご試着してみませんか?」微笑む定員が映り込み、二人は鏡から立ち去った。


2015.4.18
 

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