【第11回】しゃぼん玉 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

冬はつとめて

冬はつとめて

【第11回】しゃぼん玉

2015.04.11 | 花山周子

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 
夕暮れ薄暮はくぼの四階の窓にふたつの顔。小さな顔の後ろから大きな顔が見下ろす桜並木から、さらさらと桜の花びらが散り、散った桜をしわせて、川が流れている。川に沿って吊るされた桜まつりのぼんぼりが、がらがらと風に鳴り、桃色の灯りをとろとろと川に流す。四階の小さな顔の頬が膨らみ、うるうるとしゃぼん玉が生まれる。大きな顔の頬が膨らみぼんやりとしゃぼん玉を生む。浮かび上がったしゃぼん玉はつるりとぼんぼり色に照り、それからつるりと闇を入れる。

 

2015.4.11