【第10回】これが先生にとって不正解でも僕にとっては正解なんですが、留年はしたくないので補習は受けてあげますよ? | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。

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【第10回】これが先生にとって不正解でも僕にとっては正解なんですが、留年はしたくないので補習は受けてあげますよ?

2015.04.03 | そらしといろ

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やさしい雨をくぐってきた
からだは迷うことを知らないように
昇降口の屋根の下へ滑り込む
 
ミナミ、キタ、ミナミ、求め続けて北になる南
 
羅針盤が埋め込まれた
くちばしから尾羽の先は北と南を示すのみ
シンプルな情報で生きている
 
ツバメを羨ましく思うけれど、憧れはしない
 
インストールしたアプリの地図から
過剰な道を選び疲れて
未来をまるごと放り投げたい日もある
 
僕らはいつでも、正解に近い選択を迫られる
 
(ツバメ=選べない不自由)×(僕ら=選ばない自由)÷2=
 
      ツバメは僕らの知らない空の上を
          僕らはツバメの知らない空の下を
 
流れて、時々、立ち止まって、見渡す景色
 
ここからも北/そこからも南
全ての道を歩きつくすには足りない
人間として与えられた時間
 
もっと足りない、迷子の生徒でいられる時間
 
陸上部が何度も引き直す
雨に滲む校庭の
石灰で描いたスタートライン
 
地球そのものの
あそこからの緯線であり
どこからかの経線となって
 
最新の世界地図が作られるのを僕は今、目撃している


 
2015.4.3