詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

塔は崩れ去った

塔は崩れ去った

【第16回】?

2015.01.06 | 福田若之

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――
タロット

十六番目の
大アルカナ
が「塔」だ。
そこには
先端を雷に
打たれて
破壊される
塔と、その
窓から落ちて
ゆく人々が
描かれる。
図像の解釈は
様々なのだが
破滅や失敗の
象徴として読み
解かれることが
多いのだという。
塔、縦書きの記憶。喪失。
たった一枚の顔写真さえ、なく、
消え去る者たち、死者たちのこと
僕らはいつまで覚えていられるか。
歌かるた。大臣。女官。坊主。誰?
抑圧され隠蔽され、作られる記憶。
シャッフルされ、ばらばらに示される
絵柄から、一続きの物語を作りだす
ことがタロットの精髄ではないだろうか。
十六番目の大アルカナの、際限ない再現。
ばらばらでしかないはずの絵が、物語的に
再構成されて、必然としての意味を与え直される。
タロットは、だから、崩れた塔の再建を繰りかえす。
それは出来るだけ堅牢な未来の物語を作りだすことだ。
小さな、小さな、個人的な塔。乱立させてしまえばいい。
文字の塔は、決して、新しいものではない。アポリネールが
もう一世紀近くも前に、カリグラフの塔を、建立しているのだし
アポリネールだけが             建てたのでもない。
限りなどない                    繰りかえしだ。
破滅と失敗の                       象徴でもなく
男根の象徴                           でもなく、
ひとつの                               構造物と
しての                                   塔の。
……だが、これは塔か? あるのは文字だけだ。立体はここにはない。ただ痕跡。影。それさえも……
 


2015.1.6

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