【第16回】その手のなかに | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

POETRY FOR YOU

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【第16回】その手のなかに

2015.01.05 | 福間健二

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逃げていくボールと

帰ってくるボールからの反射が

だれもが見上げることのできる空に交差して

とてもきれいだ。

ありがとう。

瞼を閉じても折れない芯がなにか書いている。

 

あるいはまた

つかまるものがない

黒い部屋におりて

年輪と

果実を接合させる愛の行為だ。

変化を予感して

鳥は鳴き方を変えるが

人は学ばない。

切り分けられ

遠い場所に運ばれていく肉に指を盗まれながら

それでもおいしいとかおいしくないとか言う。

 

あまいもの

からいもの

スプーンで突き崩したそれぞれの下の方の

終わらない世界を

構成する

踊りながら消えていくものたち

そのリズムは何度でもよみがえって

スプーンをもつ手に伝わる。

 

見ていたディスカウントの店の広告を破って

蜜の壜には蓋をしない。

きみの手でもぼくの手でもない

その手のなかに

虹をわたる

一羽の鳥を入れるために。

 

 

2015.1.5