【第10回】泥棒人生 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

POETRY FOR YOU

POETRY FOR YOU

【第10回】泥棒人生

2014.11.17 | 福間健二

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 
あかね雲の下に
光る物体がある。
バス停から歩いていって
その物体を盗む。
なんだかわからないのに
そう思っただけでワクワクする秋だ。
たどりついてみると
それはもう光っていない。
ごつごつしていて、意地がわるそうだ。
 
人間にひどいことをするもの
たとえば海
いまは凪いでおとなしいけれど
怒ったらなにもかも奪う。
その海を盗んで
いなくなった神様のかわりに育てる。
どうなるのかわからないのに
だれかの仇を討ったような気持ちだ。
 
星は盗めないよ。
盗まなくても
この目が見てしまった
青い卵を
空に返しにいく途中だけど
街を盗む。きみが歩いているから。
 

2014.11.17