POETRY FOR YOU
一度も会ったことがないので
その人が死んでいるという気がしない。
押してへこませたスイッチを
押してまた戻してやるように
生死を行き来できるとしたら、
わたしは
わたしたちより多いかもしれない。
曾祖母は白樺の木の皮を剥いで
そこに歌をしたためたという。
乳白色の皮に筆を滑らせると、
なぜだか頬がピリッと痛む。
ブリタニカ国際大百科によれば
白樺は葉に「二重鋸歯」を装備している。
切り倒される前にその歯を折って
皮の余白をかすめ取っていく。
そんなものだろうか、詩は。
土をかけたら人は眠るのだ。
誰にも彼にもいい顔していたその顔が
むっつりと黙り込む。
あなたが死んだら
あなたの皮をください。
荒れ野の土を撫ぜている少女に
スイッチを渡す。
ぱちんと音がして
空が明るくなる。
2014.10.27