【第1回】われわれは | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

POETRY FOR YOU

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【第1回】われわれは

2014.09.15 | 文月悠光

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「せつない」と
口にしたときの響きが
せつなさだと思う。
実体のない感情を
喉はふるえて正してくれる。
まじりけのないものに換えて
まるく吐き出す。
 
心動かされたあと、
ひらいてしまったわずかな隙間。
それらをぬかりなく塞いでは
五臓六腑に飲み込んできた。
 
スープ皿を虹がひとめぐりするまで
一度きりの
「はじめまして」を予告する。
(主語は明かすな。
口元を拭いなさい)
朝食のための舌と
子音表の上に肘をつき、
ペンを動かしはじめている。


2014.9.14