誰でも明日のことは考える
誰かの魂のように
蒼ざめた蜻蛉(せいれい……)が飛んでいる
何も告げることなく
立っていた
ただ立ちつくしていた
それだけが出来ることだった
隣人同士がいがみあうとき
「平和」という言葉も空しく響くだけだ
RRRRRRR R R R R R R R R R R
意識野には 攻撃的なフォルムの
鮮やかなまでに白い百合が咲き
闘争の隙間を風が通りすぎる
人々は沈黙に耐えかねて
いつも何かを語り出す
その喧騒のなかでは
人生を分かつシグナルも聞こえない
そして、喧騒の巷を
さらに大きな沈黙が覆っている、
夏の青空のように。
シャッターが降りたままの
商店街は通る人もなく、
暮らす人はいるのに
廃墟にしか見えない街の稚拙な落書きに、
かつて、そこに生きた人の
長い影がただ伸びていく
誰かの魂のように
蒼ざめた蜻蛉(精霊?……)が飛んでいた
積乱雲が積み上がる、夏の青空に向かって
だから、君は黙っていたほうがいい
沈黙が音を発するまで。
2014.9.1