【第15回】もし罪にも名があるのなら | マイナビブックス

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【第15回】もし罪にも名があるのなら

2014.08.25 | 城戸朱理

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言葉から意味が引き剥がされ
世界が混乱するとき
それまでの平穏だった物語は
始まるように終わる
終わった物語は、終わったということで
誰かの心に棘を残す
だから、それは必ずや事後の物語の始まりとなる
たとえ、人生が終わったとしても。
 
その物語が、かりに
「もし罪にも名があるのなら」と名づけられたとしたら、
誰もが気づかぬうちに
物語は始まっているのかも知れない
真夏日のなかに
ふと紛れ込む秋の気配のように。
 
 
それは、何かを激しく憎むことから始まって
名前を探し続ける航海記になるだろう
その名前は、
決してたどり着けない島のようなものだろう
その島には見たこともない巨木が繁り、
色鮮やかな鳥が棲む
その島には波が寄せるが
空はない。
 
そして、ある人生は終わり
別の物語が語られ始める
 
言葉が混乱すると
世界も混迷を深めていく
そして、君には、それが世界なのか
言葉なのか区別できなくなる
人間は、人の姿のまま異形化し
空が積み上がるように
夢想を重ねた塔は
今や、倒れるのを待つだけだ

2014.8.25