誰でも明日のことは考える
ずっと、海を見ていた
青白く光る波を
波の音を聞きながら
地軸が傾くように頭(こうべ)を垂れて
一篇の詩のことを考えている
読み返すたびに、
肺まで青く染まっていく海のような詩のことを
海を見に行った
ノクチルカが打ち寄せ
赤く染まっているという浜辺を見に。
波動は躯の奥にも寄せていて
手にしていないときは、
それが書物の形をしていることさえ信じられない。
目を閉じると潮騒が聞こえてくる
素足を波が繰り返しそそぎ、
いつの間にか、額まで飛沫に濡れて。
夜のとばりが降りると
ノクチルカは発光し始める
夜光虫のルシフェリ-ナルシフェラーゼ反応と知ってはいるが
何かに応えているように見えた
なぜか、耐えがたい哀しみに見えた
だが、誰に応え、
誰が、哀しんでいるのだろう
一篇の詩のことを考えていた
読みかえすたびに
瞳まで海の色に染まっていくような詩のことを
今ならば、それが書物の形をしていることがよく分かる
余白から潮騒が聞こえると
ページの果てから海が波打ち始めるということが
ずっと、海を見ていた。
青白く光る波頭を
海そのものが秘めたかのような輝きを
名付けるならば、動悸
もしくは不安
そんな姿勢のままで、
海を見ていた。
2014.6.16