詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

誰でも明日のことは考える

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【第6回】海を見ていた

2014.06.16 | 城戸朱理

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ずっと、海を見ていた
青白く光る波を

波の音を聞きながら
地軸が傾くように頭(こうべ)を垂れて
一篇の詩のことを考えている
読み返すたびに、
肺まで青く染まっていく海のような詩のことを

海を見に行った
ノクチルカが打ち寄せ
赤く染まっているという浜辺を見に。

波動は躯の奥にも寄せていて
手にしていないときは、
それが書物の形をしていることさえ信じられない。
目を閉じると潮騒が聞こえてくる
素足を波が繰り返しそそぎ、
いつの間にか、額まで飛沫に濡れて。

夜のとばりが降りると
ノクチルカは発光し始める
夜光虫のルシフェリ-ナルシフェラーゼ反応と知ってはいるが
何かに応えているように見えた
なぜか、耐えがたい哀しみに見えた
だが、誰に応え、
誰が、哀しんでいるのだろう

一篇の詩のことを考えていた
読みかえすたびに
瞳まで海の色に染まっていくような詩のことを
今ならば、それが書物の形をしていることがよく分かる
余白から潮騒が聞こえると
ページの果てから海が波打ち始めるということが

ずっと、海を見ていた。
青白く光る波頭を
海そのものが秘めたかのような輝きを

名付けるならば、動悸
もしくは不安
そんな姿勢のままで、

海を見ていた。

2014.6.16

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