詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

流星の予感

流星の予感

【第16回】第十六週

2014.04.28 | 山田航

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  この街から夜という夜を奪ったガソリンスタンド大炎上は、
  三日三晩燃え続けた。

モノクロの映画の中に真つ黒な血が流れてた昨夜のさむさ

  少年は真っ黒な燃え跡のなかに、
  二つの指輪がかすかにきらめくのを発見した。

てのひらの渦の銀河よわが指を落ちゆく星の数ほどのゆめ

  少しは金になるかと思ったけれど、こうも煤けていちゃ無理そうだ。
  投げ捨ててしまおうかと思ったところ、
  よく見たら内側に細かい漢字のようなものがびっしりと書いてある。
  まるで耳なし芳一みたいだ。


街灯輝鈍刃
罪恋罰香唇
昔日之鐘惑
残焼二指輪

  少年はそれを読まなかった。
  一つに文字が細かすぎたから。
  二つに彼は漢字の塊に興味がなかったから。
  ただ、これがでたらめで稚拙で価値のないものであることだけは、
  なんとなく直感した。


街ノ灯リハ輝ク鈍キ刃
罪ヲ恋ヘバ罰ノ香ル唇
昔日ノ鐘ニ惑フ
焼ケ残ル二ツノ指輪

  少年はやっぱりその指輪を投げ捨てることにした。
  ただし真っ黒な焼跡の中にではなく、真っ青な大空に向けて。
  今の彼を魅了するものは懐中のナイフが引き寄せてくる、
  血の脂と匂いだけだった。


今がその時だ屈めばそれだけでどんな葉擦れも聞こえるやうな

  いつか彼が漂泊の果てに訪れた南の街の孤児院で、
  炎の記憶を持ったひとりの少女と出会うときに、
  狂犬となることだけを愛のかたちとする夜が、
  まだまだ終わらないのを確かめ合うのだろう。


  また今日も世界の何処かで誰かが、
  こんな言葉をささやくのだ。
  「一緒に地獄に堕ちよう」。


晴れ渡るはづの明日の世界へと向けて苺のまばたきをとめろ



Thanks to Mai

2014.4.28

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