【第2回】第二週 | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

流星の予感

【第2回】第二週

2014.01.20 | 山田航

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  雇ってもらうのは大変だったのに、
  クビにしてもらうのはずいぶんと簡単だった。
  上司の顔を殴るまでもなく、
  社章をつけたままチンピラに喧嘩を売るだけでよかった。

統計によれば天使の1割は片翼、決して異端ではない

  僕は笑顔が哀しそうな子が好みだ。
  そう言ったら君は、哀しそうに笑った。

君は蝶につきまとはれるやうなひと河口の雲に泣いてしまふひと
小雨もつとフロントガラスに溶けてゆけ僕らは雨の日しか飛べない

  ちゃぷちゃぷとガソリンは揺れる。
  春という季節を僕らは信じていない。
  あの悲劇を忘れないようにと命名された天使虐殺公園の
  ばかでかい噴水の水が真っ赤に変わるその瞬間に、
  急いで発車するつもりだから乗り遅れないでくれ。


逆さまのコスモス、割れたコーラ瓶、ひどく絡まるイヤフォンのコード、ぼろ傘、すぐ破るつもりの手紙、安物の指輪、ナイフで切り裂いたあとが残ったカーディガン、少しふやけた週刊誌、旧日本兵みたいだと君に笑われたナップサック、カップラーメン、安物の指輪、何から投げつけようか?

  反歌
悪あがき程度に雨は霧となりふたりの会話も細切れとなる

2014.1.20

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