【第1回】日録(1) | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

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【第1回】日録(1)

2015.06.12 | 森川雅美

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ひとは光の中の小さな影
内側からゆっくり温もり
掌をにぎりあえば繋がる
広がりの永遠にも近づく
一瞬にかすかな水は湧き
解けない問いの始まりを
さなぎの見る夢に重ねて
水面の境に注がれる眼の
盛り上がりに似て眩しい
流れが幾筋にも分かれる
ひとは光の中の消える種
無数に散らばり人知れず
誰かの想いの中で息づき
反射する風向きが飛翔し
大きな人の腕の内もあり
留まる波うつ肉の襞襞の
深奥からの笑みの片隅に
弱い羽音が鮮やかに香り
傷口が鈍くいたむままに
新しく開く裂け目になる
ひとは光の中の止まる足
柔らかく動く水辺に佇み
深奥のほとばしる空気へ
素肌のざらつきを添わせ
さ迷う脳の内側に満ちる
眩しくもさざめく音楽が
陽射しに照り映えて傾く
日日はいつもふくよかで
暖かくなりゆく隅隅まで
限りなく沁み込んでいき

 

2015.6.12