【第3回】レイトショー | マイナビブックス

詩、短歌、俳句の新しいカタチを探ります。紙から飛びだした「ことばのかたち」をお楽しみください

POETRY FOR YOU

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【第3回】レイトショー

2014.09.29 | 文月悠光

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陽が沈んだら束の間、
この椅子をゆずってください。
求めれば叶う十月のスクリーン。
影の角度になんて
もうじき悩まなくなる。
見えない闇の中で
すじがきを結び直そう。
 
遠く抜き去られていた。
あの人が速度を上げたのか、
わたしが追えなくなったのか。
いずれにせよ
遅れすぎていたけれど。
 
ゆるしたいとは思っている。
輝くカーブが現れたなら
誰だってハンドルを切る。
だからわたしも
走り出すことにした。
叶いはじめた夜には
ひとり映画館にいます。
客席の誰も気づかないが、
わたしはひそかに
アクセルを踏んでいる。

2014.9.29