野口あや子第一歌集「くびすじの欠片」
十五歳から二十歳までの作品311首をおさめた第一歌集。
くびすじをすきといわれたその日からくびすじはそらしかたをおぼえる
「どう思われますか? 教えてください」という返信が来た。自分自身を確かめようとしている。そう思われた。2005年1月。彼女は17歳だった。
解説/加藤治郎 装幀/菊地信義
短歌研究社 定価1700円
野口あや子第二歌集「夏にふれる」
二十歳から二十四歳まで、大学生であった四年間の作品824首をおさめた第二歌集。
両腕でひらくシーツのあかるさではためかせている憎しみがある僕は野口あや子の真価を、/短歌自体をややもすれば振り切ってしまうかもしれない「私」の存在の力、技巧をも破綻させる我執(自我への執着)、もしくは業、つまり煩悩への強度にこそ見い出したい思いに駆られる。/伝えるべき対象、表現すべき目的格(オブジェクト)を持たず、定型内のすべての文字が、不安定な躁のまま、ひたすらに病んでいる。/野口あや子の「私」が、その次第に老成してゆく理性や、短歌という堅固な様式に制御されつつも、否応なく膨張、暴走、氾濫し、既存の区画からなすすべもなく食み出してゆくさまを、もう少し見ていたい気がする。
解説/諏訪哲史 装幀/菊地信義
短歌研究社 定価2700円