2015.11.01
モノを生むカイシャ Web Designing 2015年11月号
編集力で魅了するカイシャ「東京ピストル」
単純なWeb制作会社は淘汰されていく‥‥なんて話をよく耳にします。そんな中で「編集すること」「考えること」を諦めずに、独自の進化を遂げた会社があります。その名も「東京ピストル」。彼らの流儀はカッコイイ!
Photo:石塚定人
社長は小説家!? 実はマジメな東京ピストルのお仕事内容
「Web制作会社に話を聞きに行くぞ!」とスタートしたこの連載。3回目にしてもう趣旨を間違えてしまったかもしれません。編集部のみなさま、ごめんなさい。
9月某日、東京・駒場東大前。ツクツクボウシの声と、雨上がりの生あたたかい湿りが残る日本近代文学館にて、取材は始まりました。
「僕、今度は小説書いてるんだよね。OKAMOTO'Sとのキャンペーンで処女作を…」
この日取材をしたのは、「東京ピストル」の代表である草彅洋平さん。あらゆる話題を打ち返すことから「トークのイチロー」という異名を持つ、ユニークでキュートな名物社長さんです。
東京ピストルのお仕事は、紙媒体やWebサイトのデザイン、編集・執筆、雑誌『TOmagazine』の制作・発行、イベント運営、ブランディング、空き物件の運用、グラノーラ専門店「GANORI」の展開(現在は分社化したようです)‥‥etc。ちなみにこの日の取材場所は、彼らが運営するカフェ「BUNDAN COFFEE&BEER」。とにかく業務範囲が手広い東京ピストル(しかも社長は小説家デビュー!)、どこからどう紹介すればいいのか! ということで、率直な疑問からぶつけていくことにしました。
Company Profile
(株)東京ピストル
組織形態:株式会社
事業内容:広告全般・大学関連・企業CIロゴ、カタログ、書籍、グッズ、Webサイトなどのデザイン制作ならびに編集。新規プロジェクトの企画、アドバイス。各種イベントの企画、運営、グッズの企画・販売。
スタッフ数:スタッフ数:10名(2015年10月現在)
設立:2006年
ーー東京ピストルさんっていつも我々の常識を超えてくる印象なのですが、きっとクライアントさんにとっても、謎集団なのでは‥‥?
草彅:そうなんだよね。リリー・フランキーさんが言うように「いただいたお仕事を断らない」をモットーに10年やってきたら、こうなっちゃったよ。でも結果として仕事内容よりも「草彅って変なヤツがいるらしいぜ」っていう印象が先に来るらしくって‥‥冗談じゃないよね。超困ってます!
ーー困ってたんですね‥‥。
草彅:みんな、すごくマジメに仕事してますからね。今は社員が10人いて、うち9人は編集者。ひとりは経理です。僕らは編集者集団だから、Webのコンテンツ制作をしたり、紙媒体の編集やゼロからの立ち上げもするし、最近はLINEアカウントの運用なんかもやってます。
ーーあれ、9割が編集者だったんですか。数年前は、デザイン会社というイメージがありました。
草彅:もともとは、僕とデザイナーで立ち上げた会社だからね。当時は東京ピストル“らしい”デザインなんかも追求したりしてました。でも、今の時代って、強烈な個性を求めなくなったよね。特にWebデザインはグローバル化していって、クセがなくて誰もが使いやすいものが主流になってる。そんな時代で、ウチの特徴やカラーをあえて保っておく必要もなくなってきたな、と。アノニマスな時代になってきたから、今は案件ごとにパートナーを選定して、ウチの編集者と一緒に制作しています。
ーー外部パートナーだとクオリティのコントロールが難しいと思いますが、東京ピストルさんの制作物はいつも素敵なデザインです。
草彅:ずっと一緒に組んでいるデザイナーが多いからね。東京ピストルに在籍していたデザイナーが、いま福岡でデザイン会社を経営しているんです。地方へ移住したかったけど、東京の仕事も受けていきたい。そこでウチが橋渡ししながら一緒に仕事する業態になりました。
ーーその関係性は面白いですね。それと、東京ピストルさんはdot by dotさんと一緒に、自分たちのオフィスをシェアオフィスとして開放されていますが。
草彅:「HOLSTER」ですね。東京の面白いフリーのクリエイターが集まる場所を作ろうとシェオフィスを始めたんだけど、自分たちの仕事に必死で運営に本気出せなかったから、最初は利用者が増えなくて大変でしたよ‥‥。でも今は満室になりました! 入居してくれているデザイナーと仕事する機会も増えましたよ。
OFFICE & PEOPLE
ゆったりと時が流れるBUNDANに活気のあるオフィスHOLSTER。
どちらも“らしさ”に溢れています
「他と同じことやってもしょうがない!」スタイルの浸透
ーー先ほど、東京ピストルらしさを追求する時代ではなくなってきたとおっしゃっていましたが、でもやっぱり「東京ピストル」は一つひとつの案件に強烈な個性を感じます。クライアントとはどんな関係で、どのようにお仕事を受注してるんでしょう?
草彅:僕らはフォーマット化された仕事も引き受けますが、基本コンサル的な案件が多いんです。打ち合わせでも、まず「草彅さんどう思う?」っていう相談からスタートすることが多い。「バズってたあのキャンペーンのように」などと話を切り出す方もいらっしゃいますが、そんな時には「他と同じことやってもしょうがない。それとは違うもの、オリジナルな企画を立てましょう!」と提案してますね。
ーーそれは草彅さんだから成せる技なのでは?
草彅:最初はそうかもしれないけど、そのスタイルでやってると、意思とか想いの近しい社員が集まって、会社が育ってくると思いますね。
ーー確かにピストルの皆さんは、それぞれ編集者としての意志のようなものを感じます。
草彅:僕の企画力と雑誌とWebの『TO』は、世間からの評価も高いですし。でもまだ失敗と軌道修正の繰り返しですよ。ま、これまでもずっと、『こち亀』みたいな人生を歩んできたわけですから。これからも、人と違う面白いものづくりの方に突っ込んでいきますよ!
CREATIVE
媒体を問わず、東京ピストルの色がにじみでるさまざまな作品を紹介します
◎取材後記 東京ピストルは「編集力」で遊べる会社!