2015.10.03
モノを生むカイシャ Web Designing 2015年10月号
リア充プロモーションの達人たち「eredie2」の魅力を探る
ネットでバズを起こすのは難しい。ユーザーをネットの外に連れ出すことは、その何十倍も難しい。そんな難題を鮮やかに突破する、リア充プロモーションの達人たちがここにいた!
Photo:石塚定人
ボケなのか、本気なのか!?
取材するときは、事前に先方のことをじっくり調べるのが初歩中の初歩である。そこで私は、今回の取材先をしっかり知るために、まずはコーポレートサイトをチェックする‥‥えっ!? プロモーションなのか、ボケなのか。社員がピンクの服を着てジェットコースターに揺られながらラップを歌う動画が現れる。
「eredie2」という会社のコーポレートサイトを、今すぐ検索して見てほしい。
「取材だからしっかり見なければ」と思っても、4分の尺を見続けるのは何かの修行かと思わされるくらいツラい。動画の再生回数は757回と、なんともビミョーな数字だ。そして同曲のカラオケバージョンも用意されていたが、こちらは再生数93回。第三者ながら、会社の経営がちょっと心配になってきてしまう‥‥。
と、こんな怪しげな前フリをしてしまったのですが、彼らの実績は本当に超超超、超素敵。私はeredie2さんが手掛けるお仕事の大ファンなのでした。
たとえば、沖縄の風景・音・匂いまでもがブラウザから立ち現れるようなプロモーションサイト「OKINAHOURS(オキナワーズ)」。そして、羽田空港から世界各地に飛び立つ旅行者の声をあつめた「みんなの声 羽田国際線でいってきまーす」など、見た瞬間に「いい! 最高!」とテンションが上がり、インターネットを断ち切って今すぐ旅に出たくなるようなプロモーションを繰り出しています。
そんな「リア充プロモーションの達人」とも呼べる社長の熊野森人さん、スタッフの柳田義幸さんと、“新入社員”の左近榮梨さんにお話をうかがってきました!
Company Profile
(株)エレダイ2
組織形態:株式会社
資本金:1,000万円
事業内容:広告及び公共機関・企業活動のプランニング、クリエイティブディレクション、アートディレクション
スタッフ数:4名(2015年9月現在)
設立:2007年9月
eredie2の不思議なチカラ
——eredie2はプランナー集団ですよね。ネットで何かのキャンペーンを企画するとき、テクノロジーがスゴいものか、ネタが面白いものが多いですが、どちらにも属さず「リア充」の方向を突き詰めているように感じます。
熊野:フフフ。やっぱりわかります? 私たちの暮らしぶりが仕事にまで滲み出ちゃって‥‥。
柳田:ちゃんと答えて(笑)
熊野:ハイ、すいません(笑)。実際、ネットでウケやすいのは面白いコンテンツですが、それはもう無料で楽しめるんですよね。じゃあ、自分自身がわざわざお金を払うことって何だろう? と考えたら、やっぱりリアルな体験に行き着きます。旅に行くとか、おいしいものを食べるとか。そういう「リア充体験」を”自分ごと化”していただけるよう、しっかり訴求して、ユーザーをお客様へと変えていくのが僕らの仕事です。
——なるほど! でも、ユーザーをネットの外に連れ出すことって、なかなか難しいですよね。そんななかでeredie2のお仕事は「やってみたい!」と思わせる不思議なチカラがある。なにか秘訣があるんでしょうか?
熊野:マーケティングデータを信じすぎない、っていうことでしょうか。Webはすべて数字を取れるから、ついついそこから逆算してプロモーション戦略を組んでしまいがちです。でもそういうものって面白みに欠けてしまうし、一般の方にもバレてしまうんですよね。本当に楽しいのか、楽しそうな雰囲気を狙ってるだけなのか、って。僕らの場合は、携わる商品やサービスのリサーチのため、とにかく現場に出ていきます。車を出して3人でお出かけして、一番売れている商品の陳列棚をガン見したり。スタッフもメインは3人だけだから、いつもみんなで一緒に行く。すると「あの時のあの感じ」って言いあうだけで、数値化できない”雰囲気”のようなものを共有できるんです。それに車では、移動中にポンポンとアイデアが出てくるんですよね。面と向かって会議するとつい真面目になりすぎるので。大切なのは遊び心かなと。
あと、僕と柳田はよくショートコントでいろんな「ごっこ遊び」をするんです。頭おかしいと思うかもしれませんけど、これが意外と効くんですよ。色んな人格を想定して‥‥。
左近:その遊び、後部座席で全て録音してます。
熊野・柳田 :えっ!
OFFICE & PEOPLE
とにかく3人それぞれの個性が際立つeredie2。
アーチ状の天井が特徴的なオフィスも、3人の個性さながらいい雰囲気です
——先ほどからやり取りを見てると、3人の関係性がすごくフラットですよね(笑)。
熊野:僕が37歳、柳田が27歳、左近が23歳なんですけど、僕がわからないことをふたりは知ってるんです。若いときは経験が少ないから仕事はできない。それは仕方ない。でも、若いからこそ生まれる発想はあるし、知ってる世界も僕とは違うんです。僕がもっとオジサンになったら若者向けの仕事ができなくなるけど、その時は2人が活躍してくれるでしょう。逆に、おじいちゃん世代にも入社してほしいくらいです。日本の消費を支えるのは高齢者ですからね。役員とか会長とかに上がってないで、彼らの目線でプランニングに携わってほしいんですけどね。
——eredie2はプランナー集団ですが、デザインのクオリティも高いですよね。
熊野:母体である「eredie」がデザインプロダクションなので、そこで制作することもあります。でも、適材適所で外部のクリエイターと一緒に制作することの方が多いです。
——デザイナーやエンジニアを雇うことは考えてないのでしょうか?
熊野:優秀なクリエイターって、すぐに独立して辞めてしまうでしょう。だから会社で雇うんじゃなくて、信頼できる外部のクリエイターとお仕事させてもらおう、っていうのが僕らのスタイルです。だから次に社員が増えるとしたら……やっぱりおじいちゃんですよね(笑)。
CREATIVE
Webサイトだけにとどまらない、
eredie2の手掛けた作品のなかから選りすぐりを紹介します
◎取材後記 eredie2は、実績もトークも超一級!
■eredie2取材メモ
制作実績の鮮やかさもうなずける、eredie2の見事なトークセッション! 取材では終始、爆笑しっぱなしでした。実は取材の前日に救急車で搬送されていた私ですが、爆笑しているうちになんとか元気になりました。良かった。コントを繰り広げる熊野さんと柳田さんに、それを静かに録音する左近さん。いい関係ですよね。オフィスは広尾の閑静な住宅街にあるのですが、みんなバリバリの関西弁なので、広尾感はゼロでした。eredie2さん、楽しいお時間をありがとうございました! トークのお仕事もぜひ増やしてほしいです!