2015.10.24
プロモーションの舞台裏 Web Designing 2015年11月号
テーマパークの来場者数増加を呼んだ、サンリオキャラクターが作れるサイト 「ちゃんりおメーカー」が生まれた背景と、その後の経過
東京都多摩市にあるテーマパーク「サンリオピューロランド」の夏キャンペーン用に公開した施策「ちゃんりおメーカー」で、サンリオが大きな話題を生んでいる。そこで、プロジェクトにかかわるメンバーを中心に企画が生まれた背景と、その後の経過についてインタビューを行った。
ちゃんりおメーカー
□クライアント:(株)サンリオエンターテイメント
□企画/制作:(株)博報堂
□制作:面白法人カヤック
中心ターゲット層を振り向かせたい
「ちゃんりおメーカー」は、専用サイト内に設けられた“サンリオキャラクターを作れる装置”のことだ。顔の形や目、鼻、口、服装やアクセサリーなど、各部位に用意された数多くのパーツを選び組み合わせていくと、サンリオキャラクターが作れるというもの。2015年夏限定で行われた、サンリオのテーマパーク「ピューロランド」の来場動機を促すこのプロモーションは、国内外に好評の輪を広げ、公開続行が決定。ピューロランドでの連動したイベントもいまだ盛況である(01)。
毎年の夏、ピューロランドは来場動機を高める目的で、さまざまなメディアを使ったプロモーション施策を行ってきた。12月にOpen25周年を迎える今年は、これまでと違い、ほぼデジタルに特化した施策を敢行した。
「サンリオの主要顧客層は、10代後半から20代という若い女性層ですが、この主要層がなかなかピューロランドに足を運んでくれない課題がありました。このメインターゲット層がもっと来場したくなる訴求を進めたかったのです」(サンリオエンターテイメント・真鍋和弘氏)
明確な課題を克服するには、必然的に主要顧客層がもっとも身近なメディア=デジタルを中心とした施策へと辿りつく。
「なかなかテレビを見ない層でもあるので、テレビ中心のプロモーションでは効果が心配。身近なスマートフォンが基点になる施策にすべきと考え、ご提案しました」(博報堂・大久保重伸氏)
目的
・夏に向けて、サンリオピューロランドへの来場動機を促進
・特に10代~30代女性層へのピューロランド来場への喚起
成果
・SNSを中心に国内外の多大な反響の獲得と来場者数の底上げ
・期間延長が決定、現在も継続する中長期的な取り組みへと飛躍
なぜ来場したくなる施策なのか?
今回の施策が反響を呼びつづける背景には、キャラクター生成装置の精度の高さはもちろん、来場動機の促進という根本的な目的を突き詰めた上で、施策ができたことにある(02)。
「ピューロランドというテーマパークが、人を誘って行きたくなる場所だと知ってほしい。誘いたくなるきっかけ作りに『ちゃんりおメーカー』があって、キャラクターを作ってそれを持ってピューロランドに行けば、イベントにも参加できてもっと楽しめるという構造は、私たちが求めていた目的と合致していました。時代の潮流を考慮すれば、デジタルを主軸にしたプロモーションにもどんどん対応していきたい。これら両者の実現を目指しました」(真鍋氏)
「キャラクター作りありきではなく、ピューロランドに行きたくしたいという目的あっての施策です。サンリオ好きなのにピューロランドに縁のないユーザーもたくさんいます。そうした方が行動を起こしたくなる、誘い/誘われる気持ちを喚起できる装置が必要だと考えたわけです。意識するターゲットを10代から30代の女性にまで広げ、自分をモデルにしたサンリオキャラクターが作れれば、相手に教えたくなるのでは? という出発点から、SNSでの拡散も念頭に全体像を設計しました」(大久保氏)
「キャラクターの自動生成」という決断
今回の施策は、目的達成のために、ほぼデジタルに特化したプロモーション展開にするという決断がなされた。さらにもう一点、大きな決断が存在する。それは、長年キャラクターを扱うサンリオが、自動でキャラクターを生成できる装置を提供する、という決断だ(03)。
「サンリオとして保持したいキャラクターイメージがありますし、私たちにとって、キャラクターはとても思い入れがあります。サンリオらしさというイメージをけっして崩さず、全社的に納得できる装置を実現するという大前提を踏まえながら、トライすることを決めました。一つひとつのパーツすべてが、サンリオブランドとして耐久できる品質に仕上がったからこそ、世の中に公開できました」(真鍋氏)
「たとえば、パーツの線の太さにしても、慎重に吟味と検討を重ねて仕上げたものばかりです。誰が作っても、“サンリオっぽいね”と言ってもらえるかわいさや愛嬌のあるキャラクターが生成されるようになっています。サンリオらしさをきちんと担保できたからこそ、利用者数が伸びていったのだと思います」(大久保氏)
「驚くことだらけ」という成果の数々
ファミリー層が目立つ来場層に対して、10代~20代女性にも支持されるように、プロモーションの方向性をシフトチェンジしはじめたのが2年前。去年のデジタル施策で約500万ユニークユーザーを獲得していたが、今年はさらに2倍の1,000万強(2015年8月末時点)、のべ1,700万回の利用という大反響を呼ぶ成果をもたらした。もちろん、ピューロランドでの連携イベントが夏の目玉キャンペーンとして機能し、来場者数の底上げにつながった(04)。
「公開直後からの反響の大きさが想定外でした。当初、公式サイトのみで告知していると、公開2日目にはユーザー数が爆発的に上がり、広告出稿の予定をストップしたほどです。また、台湾や香港、アメリカなど海外から数々の反応があったのも驚きでした」(真鍋氏)
「“友だちのために”“娘のために”“好きなタレントさんのために”といった、人のために作りたいという使い方をするユーザーが想像以上に多く、まさに誘い/誘われるという目的を具現化できた拡がりとなりました」(大久保氏)
「社内で決済を通すのが大変でした」(真鍋氏)という夏向けの施策は、期間を限定しない全社的な取り組みへと進化を遂げていく。
「私たちが本当に嬉しいのが、コミュニケーションアイテムとして根ざしてくれたことです。この拡がりを大切にしたいからこそ、秋以降の公開延長を決めました」(真鍋氏)
「現在、秋以降のパーツを開発中です。今後も飽きがこない、楽しめるサービスとして、継続的なサポートをしていきたいです」(大久保氏)