2017.09.04
テクノロジーがつなげる決済とビジネス QR決済がもたらす可能性
ネットショップ作成サービス「BASE」を運営するBASE(株)は、近年「PAY.JP」や「PAY ID」といった決済サービスの拡充に¥力を入れている。最近リリースされたPAY IDアプリでは、実店舗などオフラインでの決済も可能にした。その狙いを、同社代表の鶴岡裕太氏にうかがった。
決済サービスを利用するメリット
ネットショップ作成サービスなどを運営するBASE(株)は、近年さまざまな決済サービスを提供している。2016年6月に共通ID型決済サービス「PAY ID」をリリースし、今年6月27日には、そのiPhoneアプリをリリースした(Androidアプリは開発中)。オンライン決済サービス「PAY.JP」も、2015年9月より提供している。
それぞれの役割を簡単に紹介すると、PAY IDは、一度アカウントをつくると他の加盟店での買い物の際も、ログインするだけで個人情報等の入力をする必要がなくなる共通ID型決済サービスで、2017年7月時点の登録ID件数は60万以上。BASEのネットショップ加盟店を中心に40万店舗で利用できる。PAY IDアプリは、この決済IDを実店舗や催事などのオフラインでも使えるようにしたものだ。そしてPAY.JPは、クレジットカード決済を簡易に導入できるサービス。どちらもBASE加盟店でなくとも利用できる。なぜ同社は、これら決済サービスの拡充に力を入れているのだろうか。
「BASEのショップオーナーは、中小企業や個人商店・個人事業主の方々が中心です。そうした規模感で運営されている場合は特に、自社でやるべきことと、他社が提供するサービスに頼る部分を切り分けた方が良いと考えています。中小企業の場合は、ショップ独自の決済アカウントを持つメリットはほとんどありません。ましてアプリとなると、開発コストが合わないでしょう」
ショップが独自の決済アカウントを持つメリットとしては、顧客情報を取得でき、そこからメルマガ配信などのマーケティングにも活用できることが挙げられる。そうした点も、同サービスでは対応できる。
「ネットショップに関しては、配送手配やその連絡をするためメールアドレスや氏名・住所を取得することになります。実店舗などの対面販売の場合も、顧客の許可が得られればメールアドレスなどを取得できるので、わざわざ記入してもらう手間を省くことができます」
ネットショップでは、決済の際に必要になる情報入力の手間が面倒でカゴ落ちすることが少なくないと言われている。共通IDの利用で、こうした機会損失を減らすことにもなり得る。
「最近のユーザーは、普段からAmazonや楽天市場でライトに買い物をすることに慣れている方が多いです。そうした状況の中で、1カ月に何度も買うような消耗品や生活必需品を扱うわけではないショップで独自の決済アカウントをつくってもらうというのは、とてもハードルが高いと思います。最近は特に、キュレーションメディアやSNS、ネット検索などさまざまなルートでショップにたどり着くことができるので、初めてのお客さんが来てくれる機会が増えています。そのときに、新たにアカウントを作ってもらうというのは、手間ですよね。せっかく商品を欲しいと思ってもらえたのに、決済が面倒でやめてしまうことほどもったいないことはありません」
世間ではかつてショップからクレジットカード番号が流出してしまうという事例がいくつもあったが、共通IDを利用することで、ショップがセキュリティ面での責任を負う必要もなくなる。
「弊社では、PCI-DSSという外部の国際セキュリティ規準をクリアしていますが、(一社)日本クレジット協会が発表した『実行計画2017』のように、今後国としてもクレジットカードのセキュリティを高めるために、監査が必要になるなど、ショップがカード番号を預かることがどんどん厳しくなっていきます。そうなるとショップ側の管理コストも高くなっていくので、決済サービスを活用していくのが効率的だと思います」