テクノロジーがつなげる決済とビジネス|WD ONLINE

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テクノロジーがつなげる決済とビジネス QR決済がもたらす可能性

ネットショップ作成サービス「BASE」を運営するBASE(株)は、近年「PAY.JP」や「PAY ID」といった決済サービスの拡充に¥力を入れている。最近リリースされたPAY IDアプリでは、実店舗などオフラインでの決済も可能にした。その狙いを、同社代表の鶴岡裕太氏にうかがった。

決済サービスを利用するメリット

ネットショップ作成サービスなどを運営するBASE(株)は、近年さまざまな決済サービスを提供している。2016年6月に共通ID型決済サービス「PAY ID」をリリースし、今年6月27日には、そのiPhoneアプリをリリースした(Androidアプリは開発中)。オンライン決済サービス「PAY.JP」も、2015年9月より提供している。

それぞれの役割を簡単に紹介すると、PAY IDは、一度アカウントをつくると他の加盟店での買い物の際も、ログインするだけで個人情報等の入力をする必要がなくなる共通ID型決済サービスで、2017年7月時点の登録ID件数は60万以上。BASEのネットショップ加盟店を中心に40万店舗で利用できる。PAY IDアプリは、この決済IDを実店舗や催事などのオフラインでも使えるようにしたものだ。そしてPAY.JPは、クレジットカード決済を簡易に導入できるサービス。どちらもBASE加盟店でなくとも利用できる。なぜ同社は、これら決済サービスの拡充に力を入れているのだろうか。

01 PAY ID
PAY ID加盟店であれば、ログインするだけで決済ができる共通ID型決済サービス。PAY IDアプリの登場により、ショップ側はプリントアウトしたQRコードを用意するだけで、オフラインでの決済も可能になった https://id.pay.jp/
02 PAY.JP
クレジットカード決済を簡易に導入できるオンライン決済サービス。VISA、MasterCardなど主要なクレジットカードが利用できる。利用手数料はプランによって異なるが、2.59%~3.6%と安価。プランによっては入金サイクルを半月ごとの締め・支払いにできる https://pay.jp/
03 BASE
無料でネットショップを開設できるサービス。多彩なデザインテンプレートが用意されていて、ページ作成も簡単だ。決済の設定も簡単で、ブログやアクセス解析などの各種サービスも利用できる。アプリでの販売にも対応 https://thebase.in/

「BASEのショップオーナーは、中小企業や個人商店・個人事業主の方々が中心です。そうした規模感で運営されている場合は特に、自社でやるべきことと、他社が提供するサービスに頼る部分を切り分けた方が良いと考えています。中小企業の場合は、ショップ独自の決済アカウントを持つメリットはほとんどありません。ましてアプリとなると、開発コストが合わないでしょう」

ショップが独自の決済アカウントを持つメリットとしては、顧客情報を取得でき、そこからメルマガ配信などのマーケティングにも活用できることが挙げられる。そうした点も、同サービスでは対応できる。

「ネットショップに関しては、配送手配やその連絡をするためメールアドレスや氏名・住所を取得することになります。実店舗などの対面販売の場合も、顧客の許可が得られればメールアドレスなどを取得できるので、わざわざ記入してもらう手間を省くことができます」

ネットショップでは、決済の際に必要になる情報入力の手間が面倒でカゴ落ちすることが少なくないと言われている。共通IDの利用で、こうした機会損失を減らすことにもなり得る。

「最近のユーザーは、普段からAmazonや楽天市場でライトに買い物をすることに慣れている方が多いです。そうした状況の中で、1カ月に何度も買うような消耗品や生活必需品を扱うわけではないショップで独自の決済アカウントをつくってもらうというのは、とてもハードルが高いと思います。最近は特に、キュレーションメディアやSNS、ネット検索などさまざまなルートでショップにたどり着くことができるので、初めてのお客さんが来てくれる機会が増えています。そのときに、新たにアカウントを作ってもらうというのは、手間ですよね。せっかく商品を欲しいと思ってもらえたのに、決済が面倒でやめてしまうことほどもったいないことはありません」

世間ではかつてショップからクレジットカード番号が流出してしまうという事例がいくつもあったが、共通IDを利用することで、ショップがセキュリティ面での責任を負う必要もなくなる。

「弊社では、PCI-DSSという外部の国際セキュリティ規準をクリアしていますが、(一社)日本クレジット協会が発表した『実行計画2017』のように、今後国としてもクレジットカードのセキュリティを高めるために、監査が必要になるなど、ショップがカード番号を預かることがどんどん厳しくなっていきます。そうなるとショップ側の管理コストも高くなっていくので、決済サービスを活用していくのが効率的だと思います」

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掲載号

Web Designing 2017年10月号

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2017年8月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

10月号のテーマは「Webビジネスとお金」。電子決済やポイントシステム、はたまた仮想通貨で変わるビジネスの世界を追究します。



技術の進化に伴い、決済方法の多様化・自由度拡大により、ビジネスは大きく変わろうとしています。

①ビジネスのバージョンアップ
 ・新しい市場、新しいマネタイズ

②お金まわりに関わるコスト削減

これは、大企業がやっていることでウチのような中小企業には関係ない、で済ませて本当にいいのでしょうか?

さらに新しい技術の波(仮想通貨)が近い将来に確実に押し寄せようとしている中で、すでに波が来てしまってから慌てても遅いのではないでしょうか。そして、あなたのビジネスをさらにバージョンアップさせる可能性が眠っていないでしょうか?


本特集で、電子決済・電子マネー・そして仮想通貨という「これからの決済」を軸に、決済の進化があなたの(Web)ビジネスをどうバージョンアップさせるのか追究してみましょう。


●日本の決済の現状とIT技術進化によるビジネスの変化、中小企業にとってどんなチャンス(注意点)があり、どんな認識・準備が必要か

●データで見る、顧客の意識・利用調査、海外の現状

●身近な事例で見る、ITの進化で生まれた新しい決済方法

●決済の進化が変える<収益増大・市場拡大> 
 ・越境ECをメインに海外の状況、すでに日本で対応している例、これから小規模ビジネスでもビジネスチャンスを逃さないために必要なポイントなどを解説します。

●決済の進化が変える<買い逃し防止>  
 ・ユーザー側にすでに幾多の決済方法が用意されている現状で、指をくわえて商機を逃す(かご落ちさせる)わけにはいきません。業界、業態、商品によってどの決済方法は必須なのか、それによる費用対効果は?


●決済の進化が変える<マーケティング> 
 ・電子決済、Webマネーで期待できることとして、POSでは計れない購買データ、顧客データがマーケティングに活かせるというポイントがありますが、実際にはどんなサービスでどんなデータが取れ、それを何に活かせるのでしょうか。大手ペイメントシステム会社に聞きました。

●決済の進化が変える<業務効率化・コスト削減>

●決済の進化が変える<新しいビジネスモデル>

●決済サービスとセキュリティ

●ポイントシステム導入に必要なこと
 ・中小企業におけるポイントシステムの費用対効果は? ポイントは課税?非課税?など


●仮想通貨
 ・近い将来にやってくる、今まで決済の進化から考えられるビジネスのバージョンアップを現実のものにできるかもしれない、仮想通貨の基礎知識と、それにより具体的にどんなビジネスが可能になるのかまで言及します。