2017.08.21
百花繚乱! 新世代「決済サービス」はこう読み解く 安く導入しやすくなった理由は「代行」にあり
さまざまな決済サービスが登場している昨今。あまりにサービスが多すぎて何がどうなっているのか、自分のサイトにはどんなサービスが合うのか、よくわからないと感じている人も多いのではないだろうか。そこでここでは電子決済に詳しい多田羅政和さんに、見方・選び方のコツを教えてもらうことにした。ポイントはクレジットカードの代行にあり!?
決済を変えた「代行」システム
最近、数多く登場している新しい決済サービス。プリペイド、スマホ決済、後払いにQRなど、多種多様なキーワードが目につきますが、実はその多くは、ある「流れ」にのって現れたものなのです。それは…
インターネットが普及して以来、キャッシュレス決済を利用する機会が増えると同時に、その選択肢も大きく広がりました。クレジットカード、銀行振込、代引き、コンビニ支払い、さらにはSuicaのような交通系のICカードやプリペイドカードも一般化していますから、決済する側のユーザーにとっては、多くの選択肢が用意された状況であると言えるでしょう。
一方、ECサイトやWebサービスを展開する立場からすると、自社の決済方法としてどれを採用すればいいのか、わかりにくいことになってきていると言えそうです。特に、最近登場している新しい決済サービスに関しては、「先払い」をしてくれたりとか、「帳簿付け」をしてくれたりといった機能を提供してくれるものもあって、そんなに都合のいいことがあるのかと怪訝な眼差しを向けている方もいらっしゃるかもしれません。
実は、それら新しい決済サービスの多くは、その中身をよく見てみると「クレジットカード決済」であることが多いです。つまり今、決済の分野で起きている大きな流れというのは、実は「クレジットカード利用の拡大」なんです。
ご存じの方も多いかと思いますが、以前は中小の店舗や企業がクレジットカード決済を導入するのはとても難しいことでした。クレジットカード会社の審査を通過するのが大変なのはもちろん、仮に審査に通ったとしても、万が一のリスクに鑑みて手数料が高く設定されてしまう。言い方はよくないかもしれませんが、クレジットカード会社は商売の規模が小さなところまで手が回らなかったというわけなんです。
それが今では敷居が下がり、以前では考えられなかったような、小規模店舗でも、カード決済が利用できるようになってきています。実はこれこそが今起きていることの核心なんです。
しかし、クレジットカード会社の審査が甘くなったのかというとそうではありません。ではなぜ敷居が下がったのかというと、お店とクレジットカード会社の間に、「決済代行」と呼ばれる会社が入るようになったことで、大きな変化が起きたのです。決済代行というと、たとえばGMOペイメントゲートウェイ、ベリトランス、イーコンテクスト、ペイジェント、ソフトバンク・ペイメント・サービス…といったところがまず思い浮かびます。また、今注目されているBASEとかSPIKEといった会社もそれに当たります。
そもそもクレジットカード決済をインターネット上でも使えるようにしようとする気運は1990年代の中頃から高まっていましたが、当時そのようなシステムは一般的ではありませんでした。ですから、クレジットカード会社のECモールに出店したり、専門の会社に外注してシステム開発を行うなど、対応できるのは大きな店舗や企業に限られていました。
そこに、お店の売上とクレジットカード会社のサーバを結ぶカード決済処理システムを開発し、お店に対して比較的廉価に提供し始めたのが、今で言う決済代行会社のはじまりです。当初は「仕組み」同士をつなぐ役割しかありませんでしたが、規模の広がりに伴って、カードの契約そのものについても仲介、代行する機能を提供してきた経緯があります。
こうして決済代行会社は、代行という形で、クレジットカード会社の手が届かないような、小さな店舗、企業に対して、クレジットカードを広げていく役割を果たすようになったわけです。この流れは今も続き、IT技術などとも結びつきながら、さらなる進化を遂げているのです。
Check!
代行会社と契約した場合のクレジットカード使用手数料は3~4%程度。中小店舗にとってこの数字は、直接クレジットカード会社と契約した場合の半分以下になることもあります。
Check!
クレジットカード会社は審査が厳しいだけではありません。セキュリティ対策も含め、その運用にも厳格さが求められます。中小はそこまで含めて委託できる代行業務会社に依頼するのが妥当でしょう。
こんな機能も! 決済代行最新事情
新しく登場した決済サービスにはさまざまな付加価値を持ったものもあります。手数料だけでなく、機能面も見て選ぶことが大事になります。
星の数ほど存在する決済代行サービス。しかしその中にはECショップやネットビジネスをしている企業から高い注目を集めているものがあります。それらに共通するのは、ITとの親和性が高く、必要としているユーザーのニーズをうまく汲みとっているという点にあります。
たとえば「Square」は、小さなハードウェアを購入することで、タブレットをクレジットカード決済のできるレジとして利用できるようにするというサービスです。これによって小さな店舗が気軽にクレジットカード決済を導入できるだけでなく、たとえば期間限定のショップなどでもクレジットカードが使えるようになりました。また、大手通販のAmazonや楽天は、自社の会員情報を使って支払いができる決済代行サービス「Amazon Pay」「楽天ペイ(オンライン決済)」をはじめていますし、本来であれば1カ月程度先になるクレジットカードの支払いを前倒しにして先払いしてくれるという、ある種の金融サービスを提供してくれる決済代行会社まで登場しました。
なぜこんな競争が起きているのか。それはやはり手数料が横並びで、差を付けられないというのが大きな理由でしょう。自社のサービスに、付加価値をつけることで勝負をしているというわけです。ですから、利用するサービスを選ぶ際には、自分たちのビジネスに最適なものをよく吟味して、選ぶのがよいと思います。
話は少し逸れますが、こうした付加価値の競争はクレジットカード以外の決済にも起きています。たとえば横浜銀行が提供する「はまPay」は、加盟店で買い物をする際にスマホアプリからそのお店を選び、暗証番号を入力すると決済が完了するという仕組みです。一見最新のテクノロジーが使われているよう見えますが、実はこれは同行が提供する銀行口座引き落としの一種なんです。インターフェイスは最新ですが、中身は旧来の仕組みを活用しているというわけです。新しい決済サービスが登場したら、このように決済方法とインターフェイスとを分けて見てみると、その本質がどんなものかわかってくると思います。
さて、話を戻します。実は、クレジットカード決済代行サービスの中には利用に注意が必要なものもあります。中でも注意すべきは海外の決済代行サービスです。VisaやMastercardといったクレジットカードは世界中どこでも使えますから、店舗や事業者が、海外の決済代行会社と契約することもできてしまうのです。ネットをちょっと検索するだけで、そういったサービスはいくらでも見つかります。なんとなく、大丈夫そうかな、と思うかもしれませんが、そういったサービスを利用する際にはリスクを承知の上で契約する必要があります。
実は、決済代行会社が国をまたいで加盟店と契約することはカードの国際ブランド会社の規定違反です。それが原因となって、無用なトラブルに巻き込まれる危険性も否めません。ITは国境を超えると言いますがこと金融の分野においては、「信用」が置けるかどうかを判断する目線を忘れないでほしいと思います。