2016.09.12
一俊丸|低迷する業界で売り上げを2倍にした老舗釣船店メディアの3つの掟 [Case Study #02]成功の鍵はターゲットの転換
不況やレジャーの多様化を受けて、低迷する一方の釣り船業界。そんななかオウンドメディアを武器にターゲットを転換。見事V字回復を果たした、釣り船店の戦略とは?
Photo:山田秀隆
(写真右)株式会社一俊丸 三橋奈緒美 https://kazutoshimaru.net/
(写真左)有限会社スプレー 中間浩 http://www.bugspray.co.jp/
廃業寸前からV字回復
毎年、夏になると大勢の海水浴客で賑わう神奈川県茅ヶ崎海岸。1970年に創業した老舗釣船店「一俊丸」は、今やこのエリアで海釣りを楽しむ人たちにとって、知らない人はいないほどの有名店だ。だが、実はほんの数年前まで、いつ廃業してもおかしくないような状況だった。バブル期にこそひっきりなしに人が訪れたものの、その後のバブル崩壊やレジャーの多様化、さらに2011年には東日本大震災の影響を受け、利用客は激減。倒産寸前まで追い込まれた。それが現在のような人気店になったのは、2012年2月にオープンしたWebのオウンドメディア化に成功したことが理由だ。
同店では2008年頃から、無料のブログを利用して釣果情報を発信していたものの、反応はほとんどなし。だが、新規に構築したWebサイトでコンテンツを発信するとすぐに効果が現れ、翌月には前年同月比で利用者は約3倍に。その後も右肩上がりに客足は伸び、2015年は2011年の2倍にまでなった。
一俊丸のWebサイトを担当するのは、代表であり船長を務める三橋一俊さんの妻、三橋奈緒美さん。技術的サポートを有限会社スプレーの中間浩さんが担当し、2人で運営にあたっている。三橋さんは、以前はイラストレーターやライターとして釣りに関する書籍や雑誌を中心に活躍していたが、釣り船業界や出版業界の不況にともなって仕事も減少。一俊さんの仕事を手伝うことを決意し、さまざまな人に業績回復のためのアドバイスを求めた。
「とにかく何をしていいかわからなかったので、いろんな人に相談しました。なかには、店の前にビキニ姿の女性を並べて、お客さんを呼んでもらえばいい・・・なんていうアイデアもありました」(三橋さん)
そうしたなか、Webコンサルタントの永江一石さんにも相談。Webサイトでの集客に賭けることにした。永江さんからは数え切れないほどのアドバイスを受け、そのすべてを実行したという三橋さん。なかでも繰り返し言われたのは、①「毎日、必ず発信すること」②「今、頑張って取り組んでいることを発信すること」③「ネガティブな情報も隠さずに発信すること」。そして「ターゲットを転換すること」の必要性だった。