2016.01.09
モノを生むカイシャ Web Designing 2016年1月号
「体験」をデザインするプロ集団「1→10drive」
「ブランドプロトタイピング」をキーワードに、フィジカルな“体験”を生み出す同社。最新のテクノロジーでクライアントをバックアップし続ける彼らの挑戦は、100年先の未来を見据えている! 取材中すっかりホレてしまった、これぞ“モノを生むカイシャ”です!
Photo:合田和弘
新しい時代を切り拓く「体験をデザイン」する新会社
「素人でも5分あれば、ステキなWebサイトが作れます!」そんなキャッチコピーを掲げた無料サービスが台頭している中で、2000年代に業界を牽引した名だたるWeb制作会社は、どこに向かうのでしょう。大量生産型サービスに、淘汰されてしまうのでしょうか?
答えはNOです。時代を作った会社は今も、新しい時代を切り拓き続けています。そのフィールドは、Webを飛び出して「体験」に。
広告畑から1名、技術畑から1名、そしておもちゃメーカーから1名。異なるバックグラウンドを持つ3人が中心となる新会社の名前は「1→10drive」。Web制作業界で名を馳せる1→10Holdings(以下、1→10)の、あたらしい挑戦を取材しました。
Company Profile
(株)ワン・トゥー・テン・ドライブ
組織形態:株式会社
資本金:700万円
事業内容:ブランドプロトタイピング
スタッフ数:6名(2015年12月現在)
設立:2015年7月
ーーまずは、今回の分社化の経緯を教えてください。
梅田:広告の形がどんどん変わって、今は「あたらしい体験」を提供することの価値が高まっています。そして、これまで1→10が築いてきた技術や知見は、そのニーズに応えることができる。そこで生まれたのが1→10driveです。これ、僕が名付けたわけじゃないんですけど、すごくいい名前だなって。一緒に取り組む企業さんのブランドをドライブさせる。ぐるぐる加速させていく。そんな意味があります。
森岡:今、スタートアップがすごく盛り上がってますよね。その中を覗くと、支援するアクセラレーターの存在があって、彼らは成長を加速させています。一方、既存のメーカーとなると、今やどんどん企業規模を縮小してしまっています。そんな日本のメーカーに必要なのは、プロトタイプを開発する技術力なんじゃないかって。だから僕らは、メーカーにとってのアクセラレーターであり、「ドライブ」になりうる存在でありたいんです。
ーー「メーカーのモノづくりを加速させる、頼れる存在」ということでしょうか。
梅田:そうですね。僕は10年以上広告代理店にいましたが、広告だけを受託するやり方に、ずっと違和感を感じていたんです。クライアントの商品をプロトタイプ段階から一緒に作るほうが、ずっと本質的なモノづくりができるはずです。でも、そんな環境はなかなかありませんでした。そんな中、作る技術力を持った1→10なら、商品づくりからコミットできるじゃないか、と。HOLDINGS代表の澤邊と話がトントン拍子に進み、僕が社長として入社することになりました。
森岡:僕は技術畑出身なのですが、1→10のエンジニアはスゴい人が多いんですよ。普通、エンジニアってゴールに向かって最短ルートを攻めていく人が多いんです。でもここでは体験をどのようにデザインするかを考えながら、プログラミングをしています。デザイナー的視点を持っているんです。あと、どんな技術も食わず嫌いせずに習得するし、基盤やハードウェアも作る。HOLDINGS社内にコミュニケーションテクノロジーセクションという8人のエンジニアチームがあるんですけど、彼らはみんな頼もしいですね。
OFFICE & PEOPLE
1→10HOLDINGS.Incが一体となったオフィスは、
まさしくモノづくりの環境が整った空間でした
ーー森岡さんは技術畑、そして北原さんはおもちゃメーカーからご転職されたんですよね。
北原:はい。正直、1→10のことは転職活動するまで知らなかったんです。実は「京都で働きたい!」という想いがあって調べていたらたどり着きまして‥‥。
ーー1→10の本社は京都ですもんね。
北原:そうです。そんな薄い知識だったのですが、知れば知るほどビックリする、モノづくりの力がありました。なのに、メーカーに勤める知人はみんな1→10の社名を知らない‥‥。だからさっそく「こんな会社があるよ! スゴいんですよ!」と転職のご挨拶にまわっていたら、やはり反応がいいんですよね。京都水族館さんとのお仕事にもつながりまして、年末年始のクラゲの水槽で、演出を作らせてもらうことになりました。
梅田:魚の習性にはかなり詳しくなってきたよね(笑)。ぼくもいろんな方に1→10driveのお話をして、その後しばらく音沙汰なくても、数カ月後に「相談受けてもらえますかね?」とご連絡をいただいたりします。
ーーずっと相手の記憶に残っているんですね。でも「体験のデザイン」は、どのクライアントにとってもきっと、新領域なのではないかと。プレゼンして、一緒にやると決めるまでも大変なのでは?
梅田:そうですね。一度のプレゼンで決まるなんてことは、まずありません。絵で表現できないことも多いから、一緒に考えてプロトタイプを作って、そこでやっと実感してもらえます。
森岡:10月にコンセプト映像を発表したサンスターさんのスマート歯ブラシ「G•U•M PLAY」も、たくさんプロトタイプを作りましたね。大きな試作品を作って、だんだん小さくしていきました。そして、数年分の歯みがきをしたんではないか? というくらい歯をみがきました。
ーーお疲れ様です!(笑)
梅田:まだ会社ができて5カ月しか経っていないですし、いま手掛けているプロジェクトがお披露目されるのもしばらく先になります。1→10driveがモノを生み出すスピードは、これまでのWebや広告と比べると少し遅く感じられるかもしれません。でも、それでいいともってるんです。数カ月で消費されるものではなく、100年残っていくブランドを企業さんと一緒に作っていきたいですから。
CREATIVE
1→10driveの手から生まれた、インタラクティブな作品を紹介します
◎取材後記 1→10driveは、少数精鋭のプロ集団!