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清水幹太のQuestion the World Web Designing 2015年12月号

ラファエル・ローセ?ンタ?ール|ネット超大好き人間から自由との付き合い方を学ぶ メディアアート界の圧倒的な先駆者は、どうして教壇に立つのだろう

ラファエル・ローセ?ンタ?ール(Rafae?l Rozendaal)は、「自分の作品をト?メインこ?と販売する」という方法て?ひたすら作品を公開し続けるインターネット・アーティストた?。こういう書き方をすると本人から怒られてしまうかもしれないか?、ニューヨークのタイムス?スクェアを自らの作品て?シ?ャックするなと?、最も活躍するインターネット・アーティストの一人て?あると言わさ?るを得ない。そんな彼とイースト・ウ?ィレッシ?の居酒屋て?インターネット愛について語りあった。

この原稿を書いているちょっと前まで、私の周辺のSNSのタイムラインは「五輪エンブレム問題」一色だった。言わずもがな、東京オリンピックの公式エンブレムにパクリ疑惑が持ち上がり、最終的にエンブレムの取り下げという事態にまで発展した、あの事件のことだ。国民総出で一人のデザイナーをバッシングし続けた。ウンザリするほどの罵声が空間を越えて飛び交っていた。

これはインターネットさえなければ起こらなかった現象だ。誰もが自由に何かを発信できる。そんな環境であるからこそ、インターネットは公開リンチの会場と化してしまった。エンブレムはともかく、大好きなインターネットを嫌いになってしまいそうなほど、何の生産性もない、誰も幸せにならない凄惨な状況がそこにあった。

海外にいて日本と離れている自分でさえ、すっかり疲れてしまった。「インターネット愛」を補給しなくてはと思った。

そこでRafaël Rozendaalを居酒屋に呼び出して語りあうことにした。なにしろ彼は、下唇の裏側に「Internet」というタトゥーを施している筋金入りのネット大好き人間だ。

 

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Rafaëlのネットアート作品たち。もう10年以上もインターネットに作品を発表し続けている

 

そもそもRafaëlはなぜ、インターネットをベースに活動しているのか?

「それは、多くの人に見てもらえるからだよ。多くのものをつくって、どんどん見てもらうのが自分の戦略だ」と彼は言う。会話の中で彼が連発したのは「hierarchy(ヒエラルキー)」という言葉だ。日本語では表現しづらいのだけれど、「価値付け」というか「階級」というか。

「インターネット上には階級(hierarchy)がないんだよ。誰が何を発信してもいい」

これはとても基本的なことだ。インターネットが出現するまで、つくったものを多くの人に見せようと思ったら、他の人を押しのけてテレビだとか雑誌だとかの限られた枠にどうにか入り込むしかなかった。しかしインターネットがそのすべてを変えた。競争がないから、階級(hierarchy)がないのだ。

「インターネットでなにかを公開している限り、人脈も、アートとしての文脈も、なにも気にする必要がないんだ」

Rafaëlはとにかく階級に振り回されることを嫌う。徹底して嫌う。インターネット以外についての質問でも、同じように「階級」に眉をひそめる。

「今までの人生で一番重要だった瞬間は?」

「重要な瞬間なんて意味のないことだよ。人生っていうのはいろんなものがつながっている流れだから、その中の瞬間同士を階級づけすることに意味なんてないよ」

Rafaëlは、とにかく「階級」を忘れる努力をしているのだ。単刀直入にそれはなぜかと聞いてみた。

「階級について考えている時間が無駄だからだよ。東京がいいかニューヨークがいいかとか、寿司がいいか刺身がいいかとか。なんでもいいけど、階級について考えていると無限に時間が経ってしまう。それは、すごく非生産的なことだから」

 

ここに、インターネットを舞台としたつくり手である私たちへのヒントがある。私たちにとっては、確かに、誰かと自分を較べることや、その差がなぜ生じるのかについて考えることなんて意味がない。そんなことを考えなくても、つくったものを公開することを禁じられているわけではないし、公開してしまえば多くの人に見てもらえるチャンスが広がっているのだ。

 

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今年の初頭には、ニューヨークのタイムズスクエアのサイネージが彼の作品でジャックされた。「私もいつかこんな仕事をしてみたい」とか思ってしまうが、それは「階級(hierarchy)」くさい希望なのだろう

 

インターネットの登場は、人類にとって、当然ながらとても大きな転機だ。社会も生活も、これをきっかけにどんどんと変化してきた。しかし、それを使う人間の意識はそう簡単に変わるものではない。私たちは、「階級社会」で育ち、インターネットの登場で突然自由を与えられてしまった。

 Rafaëlはそんな自由に対して、とことんピュアだ。インターネットがもたらしてくれた自由を信じている。多くの人は突然手に入れてしまった自由を持て余しているようにもみえる。私たちが手に入れた自由はもっと生産的で、世界を面白くする道具なはずだ。弱い立場の人に匿名で自由にマウンティングするための処刑装置ではない。せっかく「階級」を気にしなくても良くなったのに、この状況はいったい何なのだろう。

 

 最後に「自分の作品が評価されなくなることとか、不安になったりしない?」と聞いてみた。

「不安にはならない。インターネットがあるから。インターネットがある限り、何でもできるからね」

 人間がこの新しい「自由」とうまく付きあっていくためのヒントが、Rafaëlとの会話の中にたくさんあるような気がした。

 

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Rafaël氏と筆者。Rafaëlとは、いつも居酒屋で会っている印象があるので、居酒屋でインタビューさせてもらった。日本にもたびたび訪れる親日家だ。秋には福岡で展示を行うらしい

 

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Rafaëlはオランダ出身だ。いろんな場所を渡り歩いてニューヨークに落ち着いたのは、「自分はどこに行っても変わってると言われるけど、ニューヨークにいる人はみんな変わってるから」だとか

 

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ある種有名な、Rafaëlの下唇の「Internet」のタトゥー。せっかくなので撮らせていただいた

 

清水幹太のQuestion the World:
30代後半になってニューヨークに移住した生粋の日本人クリエイター清水幹太(PARTY NY)が、毎月迎えるゲストへの質問(ダベり)を通して、Webについて、デジタルについて、世界を舞台に考えたことをつづっていくインタビューエッセイ。
Photo : Suzette Lee (PARTY NY)

 

Text:清水幹太
Founder/Chief Technology Officer/PARTY NY 1976年東京生まれ。2005年より(株)イメージソースでテクニカルディレクターを務める。2011年、クリエイティブラボ「PARTY」を設立。企画からプログラミング、映像制作に至るまで、さまざまな形でインタラクティブなプロジェクトを手がける。現在はニューヨークを拠点に広告からスタートアップまで幅広い領域にチャレンジしている。>http://prty.nyc/

掲載号

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