2015.12.19
日本人の半分はまだECを利用していない データアナリスト萩原雅之氏による統計コラム
いま、日本人の何%くらいがオンラインで買い物をしたことがあるのだろうか。
最近では、ほとんどのアンケートはネットリサーチで実施される。購買状況や広告効果など企業のマーケティング課題解決に有用で、安くて早いので重宝されている。だが、回答しているのはインターネットの利用者で、ネットリサーチ会社のモニターに登録している人たちだということも忘れてはいけない。日本人全体の動向を知るには、世論調査同様、たとえばネットを使わないような地方の高齢者なども対象に含めた調査は貴重だ。
野村総合研究所が3年ごとに実施している「生活者1万人アンケート」は、日本人全体(15歳~79歳)からの無作為抽出で対象者を選び、家庭に訪問して調査票を配布、回収するという貴重な大規模調査である。2000年にスタートして、テーマは暮らしぶりの評価から、ライフスタイルや価値観、メディア接触、デジタルデバイスの利用状況まで多岐に及ぶ。2015年11月、7回目となる2015年の調査結果が公表された。
同じ設問で15年間のデータがそろっているので、世の中の変化が手に取るようにわかる。たとえば、2000年時点で数%にすぎなかったEC経験率は着実に上昇し、49%となっている。ただ視点を変えれば、日本人の半数は未経験ということでもある。年齢による経験率の差は大きく、高齢者層では利用していない人がまだまだ多数を占める。前回調査(2012年)から、特に20歳代の利用率が大きく増えているのはスマホの普及によるものだろう。
私たちは自分の経験や目に見えるものをベースについ考えることが多いので、それが普通と思い込んでしまうことは珍しくない。特に東京などの都市で生活していればなおさらだろう。平均利用時間やスマホアプリの利用など、ネットリサーチによるネット利用の実態調査の数字は過大になりがちだ。このような歪みの少ない調査結果を見ることで、自分の肌感覚や常識がどのくらいずれているのかを確認することは、けっして無駄にはならない。
- Text:萩原雅之
- トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/