2015.10.03
ハギハラ総研 Web Designing 2015年10月号
アジアでのネットビジネスに必要なこと データアナリスト萩原雅之氏による統計コラム
8月にバンコク、ジャカルタ、マニラに出張する機会があった。雑然とした街並みやエネルギッシュな人々は相変わらずだ。以前と明らかな違いがあるとすれば、電車内やレストランで、多くの人たちがスマートフォンを手にしていることだろう。その様子は東京とほとんど変わらない。
実際、ASEAN諸国のスマホ普及率は高い。Googleのデジタル機器利用に関するグローバル調査「Consumer Barometer」の最新データによれば、日本ではいまだにスマホユーザーよりもPCユーザーの方が多いが、スマホ先進国として知られるシンガポールやマレーシアはもちろん、ASEAN諸国はいずれもスマートフォンの利用者数がPCを上回っている。
日本企業にとって、かつては工場など生産拠点としてみていたASEAN諸国は、いまや巨大な消費者を抱える魅力的なマーケットである。経済成長が続きインフラもこれからさらに整備されていく。
日本では1990年代後半にネットの普及が始まり、利用するためのデバイスは10年以上PCが中心であった。そしてこの数年でスマホが急激に普及したことで、「スマホシフト」という現象が起こった。
一方、ASEAN諸国では、通信インフラの遅れなどから、家庭にPCが普及しないうちにスマホが登場した。個人目的で使える初めてのネットデバイスがスマホという消費者も多い。ネット広告、SNS、ECなどをASEAN諸国で展開する場合、日本でいう「スマホネイティブ」への対応と同じような考え方が必要となるだろう。
ただ、ASEANにおけるネットビジネスでも消費者理解が欠かせない。仏教のタイとイスラム教のインドネシアでは、消費者の嗜好や行動が異なる。エリアや社会階層による違いも大きい。大都市部と島部では消費行動や生活水準が異なり、統計的な数字だけではなかなか実態をつかみにくい。今回の出張でも、ショッピングセンターやローカルのコンビニで、品揃えや価格など、現地のリアルを感じることが何より役立ったように思う。
- Text:萩原雅之
- トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/