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月刊 店舗設計 Web Designing 2016年1月号

カメラ用品ブランド「ULYSSES」|適切な場所での情報発信がビジネスの可能性を広げる 注目を集めるネットショップの集客術を知りたい

オリジナルのカメラ用品を販売する「ULYSSES(ユリシーズ)」は、もともとカメラ愛好家だった魚住謙介さんが立ち上げたブランドだ。認知拡大やファン獲得には、製品の魅力はもとより、適切な場所への情報掲載が有効だったという。その秘訣と効用についてうかがった。
Photo: 岸マモル

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SHOP:ULYSSES
創業:2009年6月
スタッフ数:6人
取扱商品:カメラ用品
商品点数:約100点
SNS:Twitter Instagram Facebook

伝える情報量をあえて7割に

魚住謙介さんは、車のディーラーや家業であった明太子店の店主を経て、2009年にカメラ用品のブランド「ULYSSES」を立ち上げた。そのきっかけは、趣味のカメラブログだったという。

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私が間違っておりました。
2003年から2013年まで魚住さんが書いていたカメラブログ。1日に3,000人ものアクセスがあった。ULYSSESのオフィシャルブログが立ち上がるまではここで商品情報なども発信していき、ブログ経由でULYSSESのお客さんになった人も少なくなかった

「写真を撮るのが大好きで、写真とカメラのブログをやっていました。そこで、日常生活でコーディネートしやすいデザインのこんなカメラ用品があったらいいのにという愚痴を書くと、多くの肯定的なコメントがつき、アクセスも増え、みんなも欲しいんだという手応えを感じました」

魚住さんは、それまでまったくツテのなかった製造工場とコネクションを作り、商品開発をしていった。

「自分が物を選ぶときの感覚をひも解くと、3つの要素がありました。1つは新しさ。ハイテクという意味ではなくて、それまでにない視点で作られているということです。2つ目は、ずっと競争に勝ってきた普遍性があるということ。3つ目は、心地よいこと。尖ったものは刺激が強いので一時的にはカタルシスを感じますが、飽きがきてしまう。心地よい物は、本能的に好かれます。ULYSSESでは、その3つの要素が入ったものを作るようにしています」

カメラのヘビーユーザーである魚住さんが企画する製品は、『使い手のことを本当にわかっている』と好評を得ていった。サイトの商品紹介ページでは、そうした各製品の特長がシンプルな文章と写真で解説されている。

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ULYSSESのサイトの商品紹介ページでは、数々のこだわりや特長を短い言葉にまとめ、写真とともに紹介している。これらは、裏を返せば、魚住さんが工場へ発注する際にオーダーしたポイントでもある。また、ページ下部には購入者が投稿した「カスタマーレビュー」を掲載。ネットでは正直であることが大事であるという考えから、的外れな意見でない限りは☆1つでも掲載するようにしている

「説明文は、一度書いたものをぎゅっと短くしています。また、あまり細かいところはあえて書かずに、言いたいことの7割程度に抑えています。作り手本人は思い入れ過剰になりますが、それを客観的に見ると暑苦しいじゃないですか。あと商品情報が10割書いてあると、届いたときに『書いてあった通りのものが来たね』と、感動がないんです。届いてから3割分の驚きがあることで、満足度がぐっと高まります」

脳内占有率を上げるためのタッチポイント作り

個人ブログは、ULYSSESのオフィシャルブログとして引き継がれ、いわゆるコンテンツマーケティングとしての役割を果たしている。

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ULYSSES BLOG
現在はULYSSESのメンバーみんなで執筆し、カメラ情報や新製品の開発状況などを発信している。ネット上で信頼できるブログだと思われるためには、日頃からフラットな視点での発言や言動が大切になる。ULYSSESでも不良品が出たなどのトラブルを包み隠さず発信することで、お客さんに励まされることもあったという

「新製品の開発過程など、常に変わる状況はブログで発信しています。お客様としては、うまくいった話よりもうまくいかなかったネタの方が面白がっていたりしますね。また、一般に脳内占有率とも呼ばれますが、商品を買うときに人が頭に浮かぶブランドは3つぐらいと言われています。継続的にブログやサイトにアクセスしてもらうきっかけを作ることで、カメラ用品を買いたいと思ったときに想起する3つの中に入っているようにという、戦略的な役割もあります」

カメラの発売予想をする「ノルソル」というコンテンツも、同じ役割を果たしている。

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ノルソル
サイト内のカメラの発売予想コンテンツ。仕事上必要で集めている情報を共有することで、ユーザーにとっては有益な情報となる。また、それを目当てにサイトへ訪問してもらうきっかけにもなっている

「新しいカメラの発売から極力短期間でボディケースを作れるように、新製品情報を常にチェックしています。カメラは高いものなので、買った直後に新製品が出たりしないかと、購入前に調べる方が多いのです。そうしたお客様に情報をシェアすることでも、サイト訪問のきっかけ作りをしています」

そしてブランドの認知をもっとも拡散させているのが、メディアでの紹介記事だという。魚住さんは、どのメディアを選ぶかが、そのままブランディングでもあるという。

「ブログを書いてきたことで、カメラに関する情報源としてどこが良いかという知識がありました。そのため、自社製品を取り上げてもらえれば情報が伝搬しやすい媒体についても体験的にわかっていました。うちが一番頼りにしているのが『デジカメWatch』さんで、商品開発自体、ここに掲載してもらえるクオリティのものをというのを一つの指標にしています。他のメディアの記者さんたちもよくチェックしているので、他の雑誌やサイトなどの露出にも繋がります」

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デジカメWatch
デジタルカメラに関する情報を発信するWebマガジン。画像は、掲載されたULYSSESの記事

Facebookを起点に広がった越境EC

ULYSSESでは海外のユーザーも増えつつあり、現在は顧客の1割を占めている。

「世界中のカメラの95%は日本製なので、日本製カメラ向けの製品を作っていけば、おのずと世界中がマーケットになるという目論みは、ブランド立ち上げ当初からありました。最近はリピーターもつき、海外からの注文は増え続けています」

海外に知られるきっかけは、英語でFacebookページを運用しはじめたことだった。

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ULYSSES Facebookページ
Facebookページは英語で展開している。これらは翻訳スタッフをアウトソーシングし、日本語の原稿を送って翻訳・公開してもらうことで、国内とタイムラグを少なく情報発信している

「2011年頃にFacebook広告に興味があって、勉強をしていました。ダイレクトに海外の方に広告が打てるということで、試してみたら反応率が高くて驚いて。あっという間に海外からいいね!がついたんです。それでFacebookページに英語の書き込みをしていったら、海外の方からも買いたいという声があがり、英語サイトを開設しました」

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ULYSSES 英語サイト
ULYSSESでは海外からの利用者も多く、英語サイトを用意。ブログも国内と同じ記事を英語で発信している。これまでに38カ国から注文があり、リピーターになっている人もいる

ちなみに、広告を出したのは後にも先にもこのとき一度きりだという。

「新規のお客様の増え方がゆるやかでも、リピーターのお客様がとどまってくれて、出費が少なければ売上は増えていきます。それであれば、広告よりもお客様に喜んでもらえることにリソースをかけた方が、結果として効率も良くなります。情報を欲している人にきちんと届けることが、ほぼすべての広報手段だと考えています」

カメラバッグなど、まだまだ作りたいものがたくさんあるという魚住さん。最後に今後の展望をうかがうと、意外な答えが返ってきた。

「カメラに興味はないけれどULYSSESのテイストが好きだという声も多いので、カメラ用品以外のものも作っていきたいと思っています。すでにウォレットを1年以内に出す予定で動いています。そうなるといままでとは違う、新たな媒体へのパイプを作らないといけないですね」

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掲載号

Web Designing 2016年1月号

Web Designing 2016年1月号

2015年12月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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