2015.11.23
One's View コラム Web Designing 2015年12月号
[Webサービス:Formlets]複雑性と汎用性の狭間
4人のナビゲーターが、それぞれ自分のジャンルから一つの対象を選んで毎月紹介する「ナビゲーターズコラム」。選んだ対象の目の付け所や特徴など、わかりやすく解説してくれます。
今回紹介するのは、オシャレなフォーム作成サービス「Formlets」だ。フォーム作成サービスというのは栄枯盛衰が激しく、最近は他でもメジャーなもので「Type Form」、古くは「Survey Monkey」や「Wufoo Form」などが有名だった。栄枯盛衰が激しい理由としては、複雑性と汎用性のせめぎ合いから生まれる、ニッチとスケールの問題が大きい領域だからだと思う。フォームは汎用性が求められる一方、細かい機能(たとえばFacebook連携ができたり、写真を投稿できたり、答えによって次に出す質問項目を変えたり、複雑にしようと思えばキリがない)も同時に求められる。
この複雑性と汎用性のバランスが、プロダクトを作っていく上で最大の力の見せ所になるのではないかと思う。特色を出そうとすれば先行するサービスに対して差別化できる一方で、あまり複雑にしすぎても汎用性がなくなってスケールしない。実際、「使いやすい」「デザインがイケてる」という触れ込みの新しいフォームサービスが生まれては消える中、長く続いている鉄板アンケートフォームは「Google Form」だ。かなり簡素な機能のように見えるが、逆にシンプルなだけに汎用性があるのだろう。Formletsは、質素になりすぎないまでも、ドラッグ&ドロップでステキなフォームが作れるのだ。
広く使われるものは、発明者が思ってもみなかった使われ方をする。何かの一部になりうる、使い手によってまったく性質を変える、そういうシンプルなプロダクトだ。個人的には、輪ゴムなんかは料理から工作までと非常に幅広く使える、すごいプロダクトだと思う。便利と言われるギリギリのミニマム領域のところまで機能をそぎ落とし、そのミニマム領域の完成度を死ぬほど高める。それが生まれては消えるフォームサービスの領域から学べることではないかと思う。
【Web Service】Formlets


- ナビゲーター:仲暁子
- Chief Executive Officer/Founder 1984年生まれ。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、企業と個人をビジョンでマッチングするビジネスSNS「Wantedly」を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。https://www.wantedly.com/