2015.09.15
商売の枠をはるかに越えて。魅力を語り続ける「ベルギービールJapan」のオフライン活動●特集「EC再強化」 [INTERVIEW 04]ブームに火をつけたECサイトの文化とは
最近のベルギービールのブームをご存じだろうか。国内だけで1,000種以上あるというビールの、まるでワインのように広く、深みのある世界が人気を呼んでいるのだ。そのブームのきっかけを遡ると、とあるECサイトにたどりつく。
ベルギービールに魅入られ踏み込んだ先
ベルギービールを専門的に販売するECサイト「ベルギービールジャパン」。店主の三輪一記さんは、ベルギービールがほとんど知られていない時期からその商品性に注目し、販売を手掛けてきた人だ。
「今回、取材のお話しをいただいたので、当時の帳簿を見てみたんです。そうしたら1999年の、月あたりのベルギービールの売上がだいたい5万から10万円でした。これでは商売にはなりませんよね(笑)」
ベルギービールジャパンは、愛知県名古屋市の中心街、官公庁の集まる丸の内に店舗を構える酒販店「木屋」が運営するECサイトだ。こぢんまりとした店だが、並んでいるベルギービールのラインナップは、珍しいものばかり。好きな人にはたまらない店だろう。
三輪さんは木屋の4代目として、1993年から店に携わるようになったというが、時代はポストバブル。店は苦境に陥っていた。
「何かしなくちゃという危機感の中で、考えたのが専門店化なんです。地酒の会に入ってみたり、ワインの勉強を始めたり。ただ、実は私がお酒にそんなに強くないもので、もうちょっと軽く飲めるものはないかなと探していたところ、ベルギービールを知りまして」
実際にベルギーを訪れて、その豊かな世界に引き込まれた。
「小さな国なのに、ビールが1,000種類以上もあるんですね。日本でビールというと金色が普通ですが、黒に白、赤や茶色もある。甘いものや苦いもの、酸っぱいもの、さらには香りがフルーティーなものやスパイシーなものまであるんです。アルコール度数も、高いものでは12~3%までと幅がある。自分が好きな銘柄を見つける、そんな楽しみがあるんですね。これはいいなと思ってさっそく仕入れて、当時運営していた木屋のECサイトで販売を始めたんです」
しかし結果は散々。「ほとんど売れなかった」というわけだ。三輪さんは、当時の心境をこう振り返る。
「開き直って趣味のつもりで扱っていました」
実はこの“趣味”という言葉が、ブレイクの鍵となる。
商品としての「ベルギービールJapan」とは?
ベルギーでは、自然発酵のランビックをはじめ多種多様なビールが800種類以上も造られている。味はもちろん、素材や色、香りなどさまざまな違いがあり、まるでワインのような広がりがある。顧客はそれぞれの味の理由や、文化的背景まで知りたいと考える人が多く、なかにはマニアックにそれを追究する人もいる。